イケメンで仕事もしっかりこなし、とにかく女に優しい希代のモテ男ニシノユキヒコ(竹野内豊)は、ひたむきに本当の愛を欲していた。
10年前に人妻(麻生久美子)と関係を持ち、元恋人(本田翼)と二股で会社の上司(尾野真千子)と職場恋愛に至り、料理教室で出会った主婦(阿川佐和子)もとりこにしてしまうなど、彼の周囲には常に女性たちがいた。彼女たちの欲望を満たすべくひたすら尽くすニシノだったが、最終的にはみな彼から離れていってしまい……。(シネマトゥデイ)
いい感じに枯れた竹野内豊の当たり役!
本作が公開当時「旬な女優を弄ぶ竹野内豊のプレイボーイぶり炸裂映画か!?」なんて軽く気になっていた映画【ニシノユキヒコの恋と冒険】。結局その時には何となく気持ちが乗らずスルーしてしまって、このタイミングでようやく鑑賞しました。
この作品、結構好きですね!
『今の竹野内豊の枯れモテパワーを十二分にひけらかす男性には嫌味な、女性には胸キュンな映画』と勝手に決めつけていた内容とは若干違い、いやその側面もあるが… これと言って盛り上がりや分かりやすく胸を刺さるシーンが無いっちゃ無いんだけど、この淡々とたノリで120分飽きなさせなかったのは、何かしらの魅力があったんだと思う。
内容とはしては、結婚までは出来ない稀代のモテ男:ニシノユキヒコの、数人の女性遍歴をオムニバスっぽく見せる『ちょっと変な』映画。
特徴なのが一つ一つのシーンが無駄に長かった! なんだけど普段なら「いや、長っ!」とツッコミを入れてしまうところだが、これはこれで独自のゆるーい時間が流れて、演出的にユキヒコが存在する時間やその存在自体がじわっと馴染んで来て、これはこれで良かった。この辺り人によってはすんごい退屈に感じてしまうかも。
男女で見方が変わる余白
この監督、過去作の【人のセックスを笑うな』でもそうだけど、私生活であり得る『恋愛未満の言葉では言い表しにくい不確かな距離感や関係』の場面場面を切り取るって抑揚なく見せる
ってのが作家性なのかな。
やや竹野内豊でも展開的に無理な部分や強引な面はありつつも、男性目線、女性目線で見方や捉え方が変わる余白を持った映画だなと。
ユキヒコの女性にモテる要素がこの映画に見え隠れしてるので、男性も毛嫌いせずに見てみるのも良いのでは? 髪の乱れを自然にスッと直してあげるのはレベル高いなぁ…
女優陣のチョイスは絶妙だし、動物を絡めたシーンが他の映画よりも上手いなとかはあるんだけど、その中でも特に出演者のスタイリングが良かった。
ユキヒコの地味なスーツ姿にそれと対照的な全身白を基調とした着心地の良さそうなリラックスした私服も大人のさり気ないオシャレ感で魅力的に見えたし、アイコンとしても分かりやすい。あの帰宅してネクタイをしたままコーヒーを入れる姿とか、女性はキュンと来るところなんじゃないか?!
で、意外と竹野内豊の『モテぶり』に嫌味がそこまで無かったのが意外だった!彼の人当たりの良さとか、そこまでドヤ感がないナチュラルな佇まいは竹野内豊の実力だなと、安っぽくなくちゃんと『イイ男』感が出てました。俳優:竹野内豊の使い方としては満点っす。
竹野内豊演じるユキヒコはどんなにモテて女性といちゃいちゃして、関係を持っても満たされてなくて、どこか幸せそうじゃないのよね。それは純粋な『愛』に出会えてないのもあるし、彼の性質的にきっと難しいんのだろうな。そこに微かな『モテ男』の哀愁を感じた。贅沢な話だけどね。
人妻の麻生久美子、ツンデレ上司の尾野真千子、ちょいエロな元カノの本田翼、隣に住んでる天然系な成海璃子と何を考えてるのか分かりにくい木村文乃、綺麗なおばさんの阿川佐和子、実質準主役の可愛かった若手女優:中村ゆりか。この並びとキャラ当てだけでも見る価値はそれなりにあるだろ!
ただ残念なのが麻生久美子演じる夏美のシークエンスだけだいぶ薄めなので、麻生久美子好きとしてはかなり物足りない。もう少し全体的に端折れる『間』を詰めて、麻生久美子との物語をもうちょっと見せてくれたら良かったのに。スピンオフでこの物語だけ見たい!
あと、最後の夏美との下りは変な余韻があって、あれは解釈によっちゃ面白い。他の人の映画の感想でそこまで言及されてなかったので、そのままって事なのかな?深読みし過ぎ?
まとめ
良かった点
- 嫌みじゃないいい感じに枯れた竹野内豊
- それなりに豪華でそそる女優陣
- 独特な時間感覚と猫との絡み
- 出演者のスタイリング
悪かった点
- もうちょっと間を詰めて欲しい
- 麻生久美子の物語の物足りなさ
[ 予告編 ] 映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』予告編 - YouTube
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