あらすじ:1993年、何事にもきちょうめんな妻の翔子(木村多江)と法廷画家の夫カナオ(リリー・フランキー)は、子どもを授かった幸せをかみしめていた。どこにでもいるような幸せな夫婦だったが、あるとき子どもを亡くしてしまい、その悲しみから翔子は心を病んでしまう。そんな翔子をカナオは温かく支え続け、2人の生活は少しずつ平穏を取り戻してゆく。(シネマトゥデイ)
製作国:日本 上映時間:140分 製作年:2008年
監督・原作・脚本・編集:橋口亮輔
キャスト:木村多江 / リリー・フランキー / 倍賞美津子 / 寺島進 / 安藤玉恵 / 八嶋智人 / 寺田農 / 柄本明 等
『夫婦』を考えさせられる
映画って普段体験できない事を疑似体験させてくれるところが醍醐味だったりして、それはホラー映画なんかにも言えて「こんなめには会いたくないな〜」とか思いながら非現実的なドキドキ・ワクワクを求めて楽しんだりするんだけど、この【ぐるりのこと。】はそんな映画とはまた違って『人生の糧』になるような部類の映画だった。
ずっと評判は良いのは聞いてたんだけどどうにも手に付かなくて、なんかこのタイミングでスッと手に取れた。感想は、
人生は山あり谷ありって言うけど、夫婦もそんなもんで、谷の部分が深くて長くてもそこで簡単には終わせられるもんでも無くて、少しづつでも2人で登って行かなければならない。
いっそ平坦な場所を2人で笑って歩いていけるのが一番の幸せなのかなと思った。
しっかりしてる妻とゆる〜く頼り無さげな夫。翔子とカナオはなんだかんだ言い合いのケンカはしつつもバランスが取れてて、言っちゃえばどこにでもいるような夫婦だ。
良さげなCMで見るような夫婦が夜道をぶらぶら一緒に帰るシーンから、子供を授かって幸せそうな姿を見ると「なんだ、ホッコリ映画やん」と思いきや、そこから『谷』の時期に突入して行く。
子供の死や鬱、バブル崩壊にこじれる親族との関係、裁判で映し出される実際に起こった事件など、細かな日常感を踏まえ、ある夫婦の10年間を通して『人生の一片』を見せてくれた。
何が起こるか分からないし、タイミングやその時の環境や心の持ちようで人生なんていかようにも転がって行く。でも生涯を共にする夫婦・家族である以上、好きな人だからこそ一緒にまた笑い合いたい。恋人ではない『夫婦』という関係を考えさせられた。
オジさんモテブームのキッカケはこの映画!?
中でもグッと来たのは長回し&会話によるラブシーンだ。あの大人なラブシーン!心の叫びをようやく口からこぼす事が出来た翔子、それをそっと受け止めるカナオ。「うわ、エロ...」セックスがなくてもここまでエロス漂うのかと... 空気感と2人の間がすごく絶妙で素敵なシーンでした。
それを観て「リリー・フランキーがモテる要因はこの映画にあったのか…」と悟る。最近のオジさんモテブームの火付け役はリリー・フランキーだと思っていて、その根源はこの映画にあったのだ。
キチッとしてる人ほど糸が切れた時には崩れやすい木村多江の好演も抜群でした。THE A型っぽさとか、ふとした瞬間に色気が出るのが良かったですね!俺も人間的にはこっちのタイプなので、なんか思うところはあったな。
単に見た目からは感じ取れないんだけど、法廷画家のカナオは変な話、色々な事件を仕事柄見てて「この人たちに比べれば、うちはまだ大丈夫」って気持ちが少なからずあって翔子を支えることが出来たのかな?なんて思ったり。
月日や夫婦の関係をカレンダーで見せたり、ご飯の扱い方や、翔子の兄の寺島進の安定した兄貴感とか、強烈な加瀬亮と新井浩文や、夫婦共に美大ならではの関係など、魅力的な要素が詰まってましたね。
この先自分にも似たような事が起こるかもしれなくて、最近周りの同年代の結婚が多くて、このタイミングとこの歳でこの映画を観れて良かったなと思う。もし結婚できたらこの映画をまた観直そう。
まとめ
良かった点
- 夫婦という関係を考えさせられる
- 細かな日常描写と人生の山あり谷あり感
- リリー・フランキーのモテ要因
- 軽快な音楽の入れどころ
- ポスターの写真の使い方が上手い
悪かった点
- 結構裁判シーンを最後まで満遍なく入れていたので、その分時間が長かったかな
評価:★★★★ 結構良かったぜ!偶然にも夫婦映画が3つ続いちゃったね。その中でもこの作品が1番良かった。
[ 予告編 ] ぐるりのこと - YouTube
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『人生の糧』ってなる映画でもないけど、大切なものを思い出させれくれたり、ハッとさせてくれる映画をいくつか紹介。振り返ると単にそういう映画が好きなんだろうな。
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