あらすじ:柔道で鍛えた力を買われて、北海道警察の刑事になった諸星要一(綾野剛)。裏社会に入り込んでS(スパイ)をつくれという、敏腕刑事・村井の助言に従い、Sを率いて「正義の味方、悪を絶つ」の信念のもと規格外の捜査に乗り出す。こうして危険な捜査を続けていった諸星だったが……。(シネマトゥデイ)
製作国:日本 上映時間:135分 製作年:2016年
監督・脚本:白石和彌 原作;稲葉圭昭
キャスト: 綾野剛 / YOUNG DAIS / 植野行雄 / 矢吹春奈 / 瀧内公美 / 田中隆三 / みのすけ / 中村倫也 / 勝矢 / 斎藤歩 / 白石糸 / 青木崇高 / 木下隆行 / 音尾琢真 / ピエール瀧 / 中村獅童 等
警察史上最大の不祥事をポップに映像化!
胸糞悪い保険金殺人を描いた【凶悪】に引き続き、またも実在の人物や事件をモチーフにした白石和彌監督最新作【日本で一番悪い奴ら】を観て来ました。感想は、
思ったよりキャッチーで素直に笑える!!!
1人の警察官の成り上がりと衰退を通し『警察史上最大の不祥事』をアグレッシブ且つポップに描いた快作。背徳感がある一方ブラックなユーモアたっぷりでしっかりと笑える作品だった。
↑ この写真はある映画のデジャブかな!? 左がデンゼル・ワシントンで右がイーサン・ホークかな。
柔道一筋で警察入りした真面目な男:諸星はピエール瀧演じるギラついた先輩の『ウマい仕事のやり方』に習い、自分もS(スパイ)なるワルな情報屋やツテを片っ端から集め、その情報を元に半ば強引な捜査で実績を積み重ねていく。
というよりも諸星に悪い事という意識も無かったんだろうな。それが普通にまかり通る当時の警察の甘い体制だったり、点数制なら地道に捜査しようがグレーな捜査だろうが同じ点数に変わりはなく。
点数稼ぎで得た評価とそれにくっついて来るイイ女、S周りからの人望などの『旨味』がドラッグのように快感へと変わり次第にエスカレートして行く。
綾野剛の代表作として認定!
縦横無尽に振る舞うバイタリティある諸星を綾野剛が熱演!【そこのみにて光輝く】と並ぶ綾野剛の代表作になったんじゃないかな?!
綾野剛って意外とセリフが聞き取りやすのね!あんまりその印象は無かったんだけど、今作改めて気付かされた。シバきのタイミングとかも絶妙で器用だなぁ。
特に諸星が人間じゃなくなるシーンは最高だったな!「あ、マジでヤバいんだ…」と引いちゃう手前くらいのやり切りぶりに、どんどん役者:綾野剛に惹かれていく。
これは演出だけど、諸星のタバコを吸わない奴が実績と評価に比例して、タバコを覚え服装もだんだんと柄が悪くなり『人が変わる』様を分かりやすく表現してたのも良かったな。
↑ こんなシーンあったっけ? 宣伝用かな。夜で似たようなシーンはあるけど。一応一番右の人『警察』です。
周りのキャストも癖のあるヤツばかり。中村獅童は安定感はさすがだし、滑舌はあまり良くないけどYOUNG DAISは【TOKYO TRIBE】の頃よりも役者の風格が格段に付いてて、デニス植野は正しい使い方により輝き、ピエール瀧の説得力ある先輩感など申し分ない。
女性陣もパイオツ舐められるくらいに身体張ってて、全体的にちゃんとやる事やってるなという印象。題材も題材なだけにこういう姿勢は嬉しい。薄情な女警官がエロくて好き。瀧内公美って女優さんですね。下着のチョイスも絶妙です!
てか改めて本作の綾野剛、美味しい役すぎだろ!!!
まぁその美味しい役をちゃんとモノにする力があるって事だし、彼じゃなきゃ本作は成立してなかったと言える。
『旨味に狂わされる』一般的なテーマ
僕が観て思ったのは諸星は『公共の安全や市民の安全を守る』なんて正義感は元からそこまで持ち合わせて無かったのかなと。自ら警察に志願した訳でもないし、入りたての頃は真面目ゆえ『警察=市民を守るもん』だと漠然と思ってただけで。
そこに見えてくるのは単に『旨味』に狂わされた人間の弱さ。道を外れるが故に得れる『美味しいやり方』にどっぷり浸かってしまい、感覚さえ麻痺し遂には人柄まで変えてしまう。
不祥事を起こす政治家にも言えるだろうし、主婦の横領を描いた宮沢りえ主演【紙の月】にも通じる、誰しもが陥る可能性のある『ごくごく一般的なテーマ』を本作も描いている。
ただそのやり方を知れば誰にでも出来るわけじゃなくて、周りの環境やその人の素質・人柄・体力・欲深さ・自制心など、諸々が運悪くガチッとハマってしまったんだなと。
結果は違えど本作は日本版【トレーニング デイ】ですね。ピエール瀧演じる先輩はデンゼル・ワシントン演じるアロンゾにキャラが重なる。「またまた〜、え、マジすか?!」とどうにか切り抜けるイーサン・ホークを見習うべき!!! 他人事じゃないですよ。
イイな!と思ったところ
中盤、諸星がチャカ(拳銃)の押収に躍起になり成果を出す→ 拳銃=男性器の象徴・メタファー → 男をアゲる!的な見え方も面白かったな。押収が出来ないようになると周りの女も離れて行くみたいな。
それと本作の作風としてポップで面白おかしく描いてるんだけど、白石監督はちゃんと一歩引いた目線で今回の事件を捉えてるなと思った。
例えば同僚数人で犯人1人をとっ捕まえようと「俺が捕まえた!」「いやいや俺だ!」と揉みくちゃになるシーンは、お菓子にタカる子供達のように露骨に滑稽に見せて「馬鹿だね〜」とある種冷めた目で見てて、決して「諸星って最高なヤツっしょ?!」とキャラや扱う事件に対し肩入れしてない程よい距離感に好感が持てた。
かなり残念なポイント!
色々とテンション高く諸星の悪戦苦闘を楽しませてもらったんだけど、次第に時代にも運にも味方にも見放されてしまってからの『衰退』を描く終盤のパートが、
長ぇよ!!!
諸星の勢いが衰え物語的にもスローに落ち着いてから、無駄に引っ張り過ぎてもっとサラッと終わって欲しかった。
落としどころに迷っているのか、タイミングを見失ったのか、単にサッと終わらせらせるのが惜しくなったのか分からないけど、気持ち良く無かったですね。
本作、ユーモア溢れる作風や一人の男がそのジャンルで魅せる『のし上がりと衰退』を描いた作品として、マーティン・スコセッシ監督/レオナルド・ディカプリオ主演の【ウルフ・オブ・ウォールストリート】どうしても意識してしまうから、それこそスコセッシを見習って欲しかったですね。歯切れが悪かったなー!
+オシッコを我慢してたせいで僕の中ではかなりダラダラしたラストがマイナスポイントでした。お、終わるか? まだか...ふー、やっと終わる!? まだあるのか!... ってか終われやっ!!! まだかっ!!?の連続でした。まぁなんとか間に合ったけど。
↑ この中村獅童のような顔でオシッコ我慢しながら観てました。
まとめ
良かった点
- 『警察史上最大の不祥事』をユーモア溢れるタッチで魅せた
- 代表作と言っても過言じゃない綾野剛のハマりっぷり&熱演!
- 周りの彩るキャストの上手い当て方
- 旨味に狂う一般的なデーマを描いている
悪かった点
- 諸星の勢いが無くなってからの終盤が無駄に長い
- ピエール瀧演じる先輩が諸星にレクチャーする際に、胸を揉む女性が謎にオバさんなのがいただけない!そこは「うわ〜羨ましい!」と思う美人なお姉さんにしなきゃ。園子温なら分かりやすく美人どころを持って来そう。
評価:★★★★ 結構良かったぜ!
あ〜残念。5点満点の勢いだったのに終盤からダラダラとしてしまったせいで1点減点です。悔やまれる!さすがに40代を演じる綾野剛の老けメイクも無理があったしね。
あくまでもフィクションの体を取ってるんだしあんなじっくり見せなくても。あ、でもまた柔道に還ってくるあのシーンは好きですよ。
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紙の月
本作の綾野剛ばりに宮沢りえがハマり役&最高にフェロモン出しまくりな吉田大八監督作品。
ウルフ・オブ・ウォールストリート
言うことなしにメチャクチャ面白いマーティン・スコセッシ監督作! 監督の新作【沈黙】では窪塚洋介/加瀬亮/小松菜奈/浅野忠信/塚本晋也など多くの日本人が出演予定。楽しみですな!
そこのみにて光輝く
今までは綾野剛と言ったらこの作品のイメージが強かったですね!今をときめく菅田将暉の演技も素晴らしい。今考えるとナイスな共演でした。
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