あらすじ:1985年、ダブリン。両親の離婚やいじめで暗い日々を過ごすコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、音楽好きな兄と一緒にロンドンのミュージックビデオを見ることが唯一の楽しみという14歳。ある日、ラフィーナ(ルーシー・ボーイントン)を見掛け瞬く間に恋に落ちた彼は、思わず「僕のバンドのPVに出ない?」と口走ってしまう。慌ててバンドを組んだコナーは彼女を振り向かせようと、クールなMV(ミュージックビデオ)を撮るため音楽活動に奔走する。(シネマトゥデイ)
製作国:アイルランド /イギリス / アメリカ 上映時間:112分 製作年:2015年
監督・脚本:ジョン・カーニー
キャスト:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ / エイダン・ギレン / マリア・ドイル・ケネディ / ジャック・レイナー / ルーシー・ボーイントン 等
音楽の力で自らの世界を切り開く!
去年ノーマークで観てみたらマジに最高だった映画【はじまりのうた】のジョン・カーニー監督の最新作であり、自身を投影した自伝的作品【シングストリート 未来へのうた】を観て来ました。ネタバレはないけど割りと中身に触れています。今作は感想は、
めちゃくちゃ良かった!!!
GOODミュージック満載の音楽映画を軸としながらも、恋愛映画であり、兄弟映画であり、青春映画でもあった本作。それらの要素が心地イイ絶妙なバランスで配され、時に笑わされ、時に胸を締め付け、時にその胸を高鳴らせ熱くさせられる。
音楽の力で自らの世界を切り開き「音楽さえあれば怖いものなんて無い!」と言わんばかりの『未来=希望』に満ちた作品でした。
冒頭、美女のラフィーナに出会った事がキッカケでバンド組む決意をするコナー。個性的なバンドメンバーが集まり、バンド『シング・ストリート』の結成。楽器の名手エイモンとの曲作り、初めて作ったヘンテコな曲にサイコ寸前のMV撮影と、このハンドメイドでアナログなプロセスが丁寧に描かれ、物語の地盤をしっかりと固め、観客の心を鷲掴む。
時間の短略表現の上手さも相まって、決して描きこみ不足にならずテンポ良く物語が進むのが良いなと。【フワラーショウ!】で出来てなかったことを、ジョン・カーニー監督はサラッとやってのける。
14歳ということもありコナーは、流行りの音楽や兄オススメの音に影響されスポンジのようにそれらをどんどん吸収する。自分の置かれてる鬱屈した状況やラフィーナへの純粋な想いを原動力に曲を作る。
転校当初おどおどとしていたコナーが、当時のイケてるバンドの影響でファッションやメイクなどの見た目の変化を繰り返し、
明かに似合ってないダサめところから、時代が進むようにファッションや作る曲が洗練され、音楽に導かれるように自分の表現を見い出し自信を付けて行く。
そして見違えるようにどっしりと構えるまでに成長したコナーの姿を見て、すごく感慨深い気持ちになると同時に、こういう音楽の魅力というか力もあるだなと。
人に与える影響よりも、まずは自分がそれによって自身の世界を切り開き変わっていく。バンドとかやって来なかった自分には新鮮で「なんか… 音楽って良いじゃん!」と素直に思わされる。
音楽が持つ魅力の可視化
中盤、体育館でのMV撮影の演奏で「こうであれば良いのに」とコナーが見てる願望&理想的な光景と、エモーショナルに駆け抜けるなアッパーチューンな曲『Drive it Like You Stole It』が抜群なハマりを魅せ、
なんちゅうイイ音楽に、なんちゅう映像演出をぶつけて来るんだよ!!?
と、胸が苦しくなって涙が溢れた。いや〜、本気で感情を揺さぶられると喉がギュッと締め付けられて息がし辛くなるんだよね、それをこのシーンで久しぶりに食らっちゃいました。
【はじまりのうた】でも感じたジョン・カーニー監督の卓越したセンスによる『音楽が持つ魅力の可視化』的な映像演出を今作も見ることが出来た。
コナーの感情が溢れ出たような『Drive it Like You Stole It』然り、映画内で出てくるシング・ストリートが歌うオリジナル曲がどれも良くて嬉しくなる。そこで初めて出会う音楽、それが音楽映画の醍醐味でもあったり。
兄の存在&『師弟モノ』として楽しめる!
コナーを演じたフェルディアくんはオーディションで選ばれた演技初心者なんだけど、その素朴で擦れて無い感じが良かった。ちゃんと映画内で演者としての成長とコナーとしての成長がダブって見え、歌声もセクシーだ。
それと楽器の名手でバンドの支柱となるギター担当のエイモン。顔も若干似てるし「ウシジマくんかよ!?」と思わずツッコミを入れたくなる『うさぎの世話』の件などの意外なギャップもさる事ながら、一歩引いてバンドを客観視できてる頼もしいヤツ。ママの食い込み具合も好きだな。
↑左が兄のブレンダン/右が弟のコナー
あとはなんと言っても、手厳しくも良きアドバイザーであり音楽の先生でもあるコナーの兄ブレンダン。自分も過去に音楽を相当やり込み知識も豊富。自分の経験を惜しみなく伝え、弟のコナーに託す。ブレンダンの存在と役割がこの作品内できっちりスパイスとして効いてて『師弟モノ』ジャンルとしても楽しめる。
観た後で知ったんだけど、実際にジョン・カーニー監督に亡くなってしまった兄がいて、その兄の存在をブレンダンのキャラに投影してるらしく、確かにどこか実在感のある魅力的なキャラだった。
もちろん、ヒロインのラフィーナもファッション含め妙に惹きつけられる存在感。何だかんだMVの撮影に付き合い体も張るイイ子なんだよね。メイクが薄くなる後半から可愛い。
個人的に良かったところ
何回か出てくるコナーの泣くシーンが印象的だった。男だって泣くし!泣いた分だけ強くなる。その時に抱いた感情がその後曲として身を結ぶのがイイのよね。徐々に歌詞に乗ってくる魂や言葉の重みがコナーの成長を感じさせる。
あとはバンドメンバーのお茶目坊主ギャリーの『あの歯』の扱いや、港でのMV撮影時に謎に顔を白く塗った黒人ンギグとかも面白かった。そのメイクに触れろよ!w それにいじめっ子バリーとの関係には驚いた。
これは余談レベルだけど、コナーとラフィーナのチャリンコ2人乗りだったり、小型の乗り物に2人で乗る姿はどこか【魔女の宅急便】や【天空の城ラピュタ】みたいな、薄く醸し出されるジブリ感に一人ニンマリしてしまった。【耳をすませば】もそうだけど。
↑ イメージはこんな感じ
人生をも変える一作!?
80年代の時代感に彩られた、ぎこちなくも真っ直ぐな恋と、色んな想いが乗った音楽たち。今見るとちょいダサいファッションも彼らが多感な時期にひた向きに好きなもんに熱中していた証だろう。
ダサくても良い!それが青春なんだ!笑われても貫いて、いっそ周りも好きな子も巻き込んで!この映画を思春期に観てたら人生が変わったのかもと、そんな力さえ感る。それでいて『好きな人がいる』『好きで無我夢中に打ち込めるモノがある』そんな普遍的な幸せをガツンと魅せてくれた。
まとめ
良かった点
- 音楽に詳しくなくても、音楽の楽しさやその魅力を充分に味わえる
- GOODな音楽と卓越した映像演出の組み合わせ
- 魅力的なキャラクターと甘酸っぱい青春感
- 兄の存在による『師弟モノ』要素
悪かった点
- うーん、無かった!
評価:★★★★★ 最高!フォーー!
出てくるバンドの名前やA-ha辺りの曲は辛うじて知ってるくらいで、劇中扱われる80年代のロックは全然詳しくないけど、そんな立場でも心揺さぶられたし充分楽しめました!なのでこの辺りの音楽が好きな人にはより刺さるんじゃないかな!?今年マストですね!
パンフはLPサイズなのでチョット持ち帰りにくいけど、80年代のロックやファッションについての解説など充実した内容なので買いですよ。
[ 予告編 ]
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関連&オススメ作品!
はじまりのうた
去年、当ブログ2015年ベスト【マッドマックスFR】に次ぐ第2位にランクインした作品。こんなキーラが見たかったのと、GOODな音楽&NYの街並みが見事マッチして最高でしたね。
ONCE ダブリンの街角で
あ〜、【はじまりのうた】を観た勢いで観ておけば良かったのに、サボって未だに観れてないです。予習が追いつかなくて。すぐさま観たいと思います!超評判良いよね。
※その後観てみたので追記 ↓
君が生きた証
感情のなすがまま慟哭するように歌い上げる姿はどこか通じるものがある。セリフじゃなく歌として声に出す。息子が遺した曲を何かに駆られたように親父が歌う!