あらすじ:ドキュメンタリー映画の監督であるジョシュ(ベン・スティラー)と、コーネリア(ナオミ・ワッツ)は40代の夫婦。まだまだ自分たちは若いと考えているが、ジョシュにはここ8年完成させた新作がなく、人生や夫婦の関係から輝きが消えてしまったと感じていた。そんな中、ジェイミー(アダム・ドライヴァー)とダービー(アマンダ・サイフリッド)という20代のカップルと出会う。レコードやタイプライターといったレトロなグッズや文化を愛する彼らの姿に、ジョシュたちは刺激され……。(シネマトゥデイ)
製作国:アメリカ 上映時間:97分 製作年:2014年
監督・脚本・製作:ノア・バームバック
キャスト:ベン・スティラー / ナオミ・ワッツ / アダム・ドライバー / アマンダ・サイフリッド / チャールズ・グローディン / アダム・ホロヴィッツ 等
注意!苦い現実を見せつけられる!
人間観察に定評のある【フランシス・ハ】のノア・バームバック監督の新作で、ベン・スティラー/ナオミ・ワッツ/アダム・ドライバー/アマンダ・サイフリッド 4人の豪華キャストで俄然気になっていた【ヤングアダルトニューヨーク】を観て来ました。
軽くネタバレ気味ですが、結果よりもプロセスを楽しむ作品なので大丈夫だと思います。 観た感想は、
えええ、こんな苦い映画なのかよ!!?
一見ポスターや予告から伝わって来るような『雰囲気重視のホッコリ映画』かと思いきや、実のところ人によってはかなり胸糞悪くなる『残酷でビターな現実を見せ付けられる』ハードな映画でした!かなりガイニー!
ここ最近イマイチぱっとしないマンネリ気味の中年夫婦が、活動的でエネルギッシュな若者夫婦と出会いライフスタイルに感化される。彼らとつるむにつれ若返ったかのようにハリが無かった毎日が楽しくなって行くんだけど、あれれ、気が付けば若者夫婦に手の平で踊らされていた?!… 的なザックリいうとそんな話。
これって中年と若者の『ジェネレーションギャップ』や、単に『年齢の差から生じる考え方の違い』みたいなところにスポットが当たっているんだけど、それよりも僕が感じたのは、
不器用で生真面目で変に頑固なゆえにくすぶってる『持ってないヤツ』と、エネルギッシュ且つ狡猾で人の懐に入るのがやけに得意な、自然となんでも上手く行っちゃう『持ってるヤツ』との『差』を、
普段あまり見ないように過ごして生きてる観客にエグるようにすくって「ほらほら、これこれ、これが現実!」と見せ付けて来る、そんな『苦くて残酷な現実』を描いている。後で思ったのが三谷幸喜監督作の【清洲会議】っぽくもあるかな。
全て『歳』のせいにしちゃって
手のひらで踊らされちゃった『持ってないヤツ』はその原因を自分の性分のせいだと省みずに「今時の若い人ってすごいよな〜」と歳のせいにすり替えて、ヘラヘラして無理やり自分自身を納得させてしまう。
その瞬間、観てる側は「うわ、なんか嫌なもん見ちゃった…」という感覚に陥る。本人が歳を重ねてるだけあって素直に受け入れられず、あまり自覚してないのがまた厄介で。
別に生真面目で頑固な人が悪いって言ってる訳じゃなく、『持っているヤツ=上手くやってるヤツ』はもっと広い視野で物事をとらえ虎視眈々と行動し、その分ちゃんと成果を上げてるよって事なんだと思うけど。
出会いからラストまで一部始終の話し運びと、『仲間 → ホントに仲間か?』に移り変わるニュアンスが絶妙で、あたかも追体験してるかのように終盤は胸が苦しかった。表面上はポップな作品を装ってるだけにタチが悪い。いやポップに描いているから、ここまでの軽傷で済んだのかも?!
『映画監督』を扱う話なだけに、ノア・バームバック監督自身も多分ベン・スティラー演じる主人公のジョシュと同じような経験を過去に食らった事があるんじゃないかな?
監督が狙って『持ってるヤツと持ってないヤツ』のあり方を描いたのか、もしかして監督自身が「若い人は凄いよな〜」とジョシュ同様に思っちゃってる人なのか、読めない『含み』もそれはそれで面白いんだけどね。
アダム・ドライバーのベストアクト!
『持ってるヤツ』ジェイミーを演じたアダム・ドライバーが本作かなりハマり役でしたね!【スター・ウォーズ/フォースの覚醒】の中2感より断然雰囲気出てた。感謝の意を示す『合掌』使いや、ケロッとして悪気のない顔だったり、周りにもこういうヤツいるよ。
あとナオミ・ワッツのぎこちなさ過ぎで面白いヒップホップダンスも見所ですね!彼女の女優魂を見せられました。
『中年あるある』も面白いはず
ジェネレーションギャップを扱う映画だけに、ジョシュや妻のコーネリアと同世代の人は『中年あるある』に共感できてより楽しめるはず。観客の年齢層もわりと高めでした。
なるなんて微塵も思ってなかった関節痛や、自分の事を慕ってくれる弟子みたいな存在が出来て調子に乗ったり。子供がいない事で、子供も持つ同世代の友達とのちょっとした居心地の悪さやいならいお節介にヤキモキしたり。まだガッツリ共感する歳じゃないけど、中年特有の喜びや悩みが意外と新鮮で面白かった。
でも、手のひらで踊らされるジョシュも実は『持ってるヤツ』なんだよね、美人な妻がいて、その妻のお父さんは同じ分野の有名な映画監督。そのアドバンテージに甘えるのが嫌で意地っ張りな性格のせいもあり遅れと取ってしまうんだけど。。その融通の利かなさがヤング・アダルトなのかな。
あと、これだけ言っておきたいのは、ジョシュ&コーネリア夫婦に子供がいない・出来ないのは、ここで言う『持ってないヤツ』とは違う意味です。『子供がいない人=持ってないヤツ』では無いので。性分とその人の体質や敢えてその選択をした事とはまた別の話だしね。
本作は恋愛映画ではないけど【ブルーバレンタイン】や【(500)日のサマー】みたいに、観終わってあーだこーだ話し合える『ビターな現実を突きつけてくる系』の映画でした!アカデミー賞脚本賞ノミネートも納得ですね。
まとめ
良かった点
- 『持ってるヤツと持ってないヤツ』のあり方をビターに写す
- 一部始終の流れとニュアンスの上手さ
- アダム・ドライバーの好演&ナオミ・ワッツのヒップホップダンス
- 興味深い中年あるある
悪かった点
- 宣伝や外側のポップさが作品の内容に少しモヤをかけてる気がする
- 決して観てて気持ちの良い話ではない
評価:★★★ 普通に楽しめました。4点付けるか迷って結果3点にしました。胸糞悪いままフォローされず終わっちゃったのが後を引いたなと...惜しい。
でも、こういう『ビターな現実のあり方』を受け取りやすい形で見せてくれただけでも評価できる。きっと後味の悪さから巷の評価は低いと思うけど、語り甲斐のある作品だしアダム・ドライバー好にはオススメですね!
この映画を『持ってるヤツと持ってないヤツ』の話と受け取ってジョシュに感情移入してしまった自分も同様『持ってないヤツ』なのかもしれない。というか『持ってないヤツ』なんてそもそもいないのかも、ただ『持っているヤツ』がいるのは確かだ。
[ 予告編 ]
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関連&オススメ作品!
フランシス・ハ
ノア・バームバック監督の過去作。この作品にもアダム・ドライバーは出てるけど全然印象にない。本作にも通じる『持ってないヤツ』な主人公フランシスは、後に自覚するだけあってこっちの方が全体的にソフトで微笑ましい作品に仕上がってる。
ブルーバレンタイン
燃え上がるような恋愛の末に結婚した夫婦の破局をエグるようにビターに描く。これで「あー、結婚なんかしない!」と悟った人も多いはずw 辛すぎるんだけど反則的なエンドクレジットで全て帳消しになる。このフォローが本作にも欲しかった。
(500)日のサマー
この作品も外見の装いとは若干ギャップのあるビターな恋愛映画でしたね。こっちは『分かってないヤツ』と『一歩先を見ているヤツ』の話かな? 運命はあまり信じないけど、人は行くべきところに自然と流れて行くんだろうなと軽く悟りました。