あらすじ:自身のバンドと1990年代のヒップホップが大好きなスラム街出身のオタク高校生マルコム(シャメイク・ムーア)は、恋するナキア(ゾーイ・クラヴィッツ)を追ってドラッグディーラー、ドムの誕生日パーティーに参加する。しかし、ひそかに行われていた取引に警察が突入し会場が騒然とする中、ドムがマルコムのリュックにドラッグを隠したことから、事態は思いも寄らぬ方へと発展していき……。(シネマトゥデイ)
製作国:アメリカ 上映時間:103分 製作年:2015年
監督・脚本:リック・ファムイーワ 製作総指揮:ファレル・ウィリアムス
キャスト:シャメイク・ムーア / トニー・レヴォロリ / カーシー・クレモンズ / ゾーイ・クラヴィッツ / ブレイク・アンダーソン / エイサップ・ロッキー / リック・フォックス / タイガ / キース・スタンフィールド / ヴィンス・ステイプルス / ケイシー・ヴェジーズ / シャネル・イマン / クインシー・ブラウン / ロジャー・グーンヴァー・スミス 等
ギーク is ドープ!!!
【シング・ストリート 未来へのうた】の絶大なる評価と公開タイミングの近さ、合わせてなんとなくの見た目の雰囲気から「これはHIPHOP版シング・ストリートみたいな映画かな?」と思いちょっと期待値の上がった【DOPE ドープ!!】を観てきました。
ザ・ネプチューンズやN.E.R.D.での活動、世界的ヒット曲『HAPPY』の記憶に新しいイケてるアーティスト:ファレル・ウィリアムスが製作総指揮を務めるって事でも注目されている。
観た感想は、
中盤まではかなり楽しかった!
実際観てみたら【シング・ストリート】とダブる部分も無くはないが、向こうみたいにガッツリな『音楽映画』では無く、90年代ヒップホップカルチャーに彩られたギーク(オタク)な3人組の、ドラッグやネットが絡むてんやわんやなクライム青春映画でした。
いじめられっ子のオタクな主人公マルコムの童貞ドギマギ気質が炸裂した中盤まではかなり面白かったですね!
基本3人組の中でも特にマルコムが周りから舐められてるんだけど、見るからに良いヤツそうで反応が分かりやすく、目を見て話せなくて顔の向きがあっちこっち行っちゃったり、シャツにじわーっと染みる汗も似合ってて、なかなかのボンクラ愛されキャラ。
そんなマルコムがファムファタールな女性ナキアと出会い、ナキア目当てで行った街のドラックディーラー主催のパーティーでトラブルに巻き込まれ、混乱の中大量のドラッグを持って帰ってしまった事から波乱の日々がスタートする。
ギークと街と色のトーン
まずこのマルコムのオタクキャラと、ロサンゼルスの治安の悪い街:イングルウッドと、その街にある学校の組み合わせが良かったですね。空港みたいに持ち物検査のゲートがある学校に行けば、お金じゃなく今まさに履いてるナイキのスニーカーのカツアゲに合い、外に出ればわりと拳銃遭遇率高めなチンピラがその辺をウロついている。
それだけで映画的にオタクが活きる起爆剤が転がっている、そんな土地柄で細々と趣味に走る肩身の狭いオタクたち。
特徴的なのが、気温としての『暑さ』と作品としての『温かみ』を同時に感じられるインスタのフィルターで加工したような画のトーンだ。90年代ヒップホップ・カルチャーを扱ってるのもあって若干その辺のレトロな画を意識してるのかな?
そのトーンも相まって『いじめられて可哀想…』なんてことは感じさせず、あくまでもここではチンピラは厄介者でしかなく、素直に笑えるオタク青春映画としての見せ方にちゃんとなっている。
↑ この3人が一息ついてチャリンコで街を流す画が好き。
個人的にはレニー・グラヴィッツの娘ゾーイ・グラヴィッツ演じるヒロインのナキアよりも、レズのディギーの可愛さにヤられました!ボーイッシュな彼女の冷静さや、好きなもん着てるなと分かるファッションセンス然り。
彼女の立ち位置が男か女かでだいぶこの作品の暑苦しさが変わっていたなと思う。ディギーの存在がこの映画ならではの3人組を形成していた。
後半から変わるテンション
波乱の日々もクライマックス。中盤までのゆるめのなノリから後半グッと舵を切ってテンションを変える。
ハーバード大への進学の事や、手元にあるドラッグの件もあり、マルコムが「俺には何が出来るんだ!?」「人種差別や育った治安の悪い街の出身とか関係ねぇ!」と、ケシかけたオッサンに対してマルコムは、オタクという立場とネットを利用し仲間とある行動に出て、自分なり意地を見せる!
ここでの意地の見せ方がアメリカ映画っぽくて、よりクライム度が増す。これはこれでポップなテンションではあるんだけど、ボリュームを絞るように作品の温度としてはちょっとクールダウンして行くのが惜しかったな。
肝となる『ビットコイン』の扱いとかもイマイチ分かりにくく、キメのシークエンスも個人的にはスカッとし辛かった。
このラスト然り、本作フォレスト・ウィテカーのナレーションにも言えるけど『言葉での説明』が若干多かったかな。それがスマートだって思う人もいれば、そう感じない人に分かれると思うけど、語りの上手さで言うと【シング・ストリート】よりは不器用でしたね、その荒削りな感じが作品のテイストに合ってるっちゃ合ってるけど。
ファレルの良さげな音楽センス
【シング・ストリート】みたいに3人組がオレオというバンドを組んでいて、そっちのバンド音楽もキャッチーで良かったけど、それよりもBGMとして流れるヒップホップ・ミュージックのハメ方が心地良くてイケてました!ここはファレル・ウィリアムスのセンスでしょうね。
サントラも良い感じに仕上がってて、90年代のHIPHOPには疎いけど、それでも『Digable Planets』『Nas』『Public Enemy』『A Tribe Called Quest』など、僕でも知っているメジャーどころを多めにチョイスしてくれている。その辺りの時代の音楽やカルチャーが好きな人には小ネタ込みで刺さる映画だと思う。
恋愛・友情・進学・音楽・成長・ドラッグ・お金・人種差別・地元・ヒップホップカルチャーなど、色々な要素を内包して笑えてサクッと観れる作品でした。
まとめ
良かった点
- オタクでボンクラ3人組のキャラとバランス
- 作品トーン&画のトーンによるルックの心地よさ
- 作品を盛り上げる音楽のセンスとハメ方
悪かった点
- 終盤のシフトチェンジによるトーンダウン
- いまいちスカッとしづらいラスト
評価:★★★ 普通に楽しめました。個人的には中盤までの分かりやすくコメディよりのテンションのまま突き進んでくれてれば最高でした。過度な期待さえしなげれば楽しめる一作だと思います!
[ 予告編 ]
[ 映画館を探す ] 「DOPE ドープ!!」の映画館(上映館)を検索 - 映画.com
合わせて貼っておきます、こういう軽快なノリの映画でした。
Pharell Williams / HAPPY
関連&オススメ作品!
シング・ストリート 未来へのうた
バンドやってたり一目惚れした女のために頑張る!みたいなところは似てるかな。
ナポレオン・ダイナマイト (a.k.a. バス男)
当初【電車男】のヒットから関係ないのに【バス男】名付けられてしまったオタクコメディの傑作!後に原題の【ナポレオン・ダイナマイト】に修正される。
この作品のポテトをポケットに入れて授業中につまみ食いするようなリアルヤバいオタクのナポレオンに比べれば、本作のマルコムは全然リア充ですよ!
クール・ランニング
マルコムが大好きな【クール・ランニング】の主人公に雰囲気や顔の表情など結構似ているのよね。観ながら思い返したりしてました。
木更津キャッツアイ ※ドラマ
中盤で急に画が止まり、巻き戻って『その頃こっちではこんなことが起こっていた』的な時系列をいじった見せ方や、作品全体のてんやわんや具合など【木更津キャッツアイ】に通じるものがありました!ちょい懐かしい感じの話の作り。