あらすじ:母から愛されず、自分が誰からも必要とされていないと心を痛める14歳の宮市和希(能年玲奈)は、学校で周囲と打ち解けられず孤独を抱えていた。そんなある日、不良の春山洋志(登坂広臣)と出会い、彼らの世界に自らのよりどころを見いだすようになる。少しずつ洋志に惹かれていく和希だったが、Nightsのリーダーとなった洋志は反目し合うチームとの激しい争いにしのぎを削ることとなり……。(シネマトゥデイ)
製作国:日本 上映時間:119分 製作年:2014年
キャスト:能年玲奈 / 登坂広臣 / 木村佳乃 / 小澤征悦 / 鈴木亮平 / 太田莉菜 / 竹富聖花 / 落合モトキ / 山田裕貴 / 鷲尾真知子 / 野間口徹 / 利重剛 / 松田美由紀 等
コメディ並みに笑った不良映画!
たまたま観るものがなくて、撮り貯めしていたテレビ放送版【ホットロード】をぼけーっと鑑賞。
監督は【ソラニン】【陽だまりの彼女】の三木孝浩。主演は『のん』に改名した能年ちゃんと【HIGH&LOW】でも活躍中の三代目J Soul Brothersの登坂広臣。登坂くんは本作が俳優デビューだそうです。原作漫画は未読。感想は、
久々にスゴい邦画を観たなという感じですね!
正直言うと作品の出来としてはかなりイマイチでツッコミどころ満載なんだけど、ところどころ爆笑してしまったので、個人的には意外と好きで、多くの人にもっと観て欲しいなと勧めたい作品ですね。
テレビ版だと「これCMの間に結構大事なシーン端折っちゃった?」と思うほど、話が飛び飛びで展開され、なんとも終始ザックリな映画だなぁと思いながらふむふむと観まもる。
2時半の映画を1時間半に編集し直したダイジェスト版を観ているかのような感覚に、色々足らないシーンや無理めな話を観客が頭で補完してあげなくちゃならない。そういう寝させない工夫も凝らされてる。
ナレーション過多によるノイズ
一番印象だったのは、能年ちゃん演じる和希は口数が少ない役なので、思ってる事や心の声をナレーションを多用して補うんだけど、そのナレーションの見せ方や使い所が上手くないので「今これナレーション? それとも実際声に出したセリフ?」と非常に分かりにくい。元々声張って喋る女優さんではないので尚更。
そのナレーションの多用と、江ノ島周辺の風景から始まるシーンの多用により、他の人のセリフまで一瞬「ナレーションなのかな?」と感じさせる現象も発生。そういう意味では非常にハラハラさせてくれます!
基本ツッコミどころ=ネタバレになるのですが、この際箇条書きで踏み込みます。(書いてたら結果ネタバレしてました)
- 唯一の女友達に向かって和希がいきなりドスを効かせたセリフを吐く二重人格キャラか?と疑わせるシーン
- チャラい男達との日が暮れるまで長時間に渡るかくれんぼ的展開
- 族の総長を演じる鈴木亮平の黒沢清監督作【Seventh Code】とほぼ同じ役作り&その総長が何かしらの事件を起こし何かしらの理由で彼女と街を離れる謎のくだり
- パイプ持たれて捻られたら終わりだなと思ってしまう、登坂くん演じる春山の鉄パイプを右手にテープでぐるんぐるん巻きする危なさ
- 和希と春山が同棲した直後スーパーで買った蟹を食べてあたる突飛な展開 (2人をキスさせるための前フリ)
- 1人でさらっと薬ぐらい飲めやと思ってしまう、春山何故か薬飲むのを拒否、からの和希が口移しで春山に薬を飲ますまさかの展開
- 肝心の口移しキスシーンは江ノ島の風景シーンが差し込まれやんわり邪魔される
- 1人で薬も飲めない春山が和希に向かって「俺がいなきゃ何も出来ない女になるな!」的なセリフによる「お前には言われたくねぇよ!」と誰しもがツッコミを入れるであろう迷シーン
- 春山、人の家に上がり込みがち
- 春山、決戦時に蟹の件が長引いてるのか?単に風邪なのか?謎の体調不良
- 見せ場となりうる敵視する族との決戦は春山がトラックに轢かれた事でまさかの中止
- 春山が入院してる病院に和希が着いた瞬間、ふらっと卒倒するタイミングの悪さと変な見え方
とかとかとか、その他にもいっぱいあって… ある意味全然飽きない。逆にツッコんだりする事で映画とコミュニケーション取れてる。この調子ならあと1時間くらい余裕で観れるぜ!
役者陣はいたって真面目に取り組んでるシリアスな作風なのに、そこに差し込まれるヘンテコな展開や見せ方の連続に、7〜8回ナチュラルに吹き出すように笑ってしまった。いや〜ギャップの使い方が上手い!
ヘタなコメディ映画よりコメディしてて、つい最近観て全然笑えなかった【サマータイムマシン・ブルース】より笑えたました。本作をとち狂って劇場で観てたらマジ危なかったなと… 家で観る醍醐味ってコレだな!ってのを改めて実感しました。
唯一良かったところ!
先ほど挙げた点も見方によっては笑えるし良かったところでもあるんだけど、ちゃんと映画として良かったなと思うところは、
主役の能年ちゃんを筆頭に、木村佳乃や太田莉菜など周りにもメンヘラ感漂う女優を狙って配置してたのが上手いなと。どこか危なかっかしさや、何かをやらかすオーラを纏った人というか。
特にドラマ【名前をなくした女神】や映画【告白】などで印象に残る木村佳乃のヤバい母親感が本作でも活かされてましたね!『ヤバさを自覚出来てない』演技は逸品ですね。
あと本作、明らかに能年ちゃんはちょっと無理があるなぁとは思いました。そこにいるのは和希というよりは能年ちゃんでしか無く、当時の能年ちゃんに擦れ感や、やさグレ感が無さ過ぎて見ていて厳しかったですね。
見た目も髪がパサついてるとか、唇カサついてるとかしと欲しかったな。清潔感あるし小綺麗過ぎるよ。
とは言え、広瀬すずの方がもっと似合わないだろうし、誰がやってもベストキャスティングとはなりにくそうなキャラなだけに、能年ちゃんの役柄とは別の種類の危うさがキャラとして功を奏してるなとは思った。
カニ食って腹いてえとか、大事な決闘時に体調悪いとか春山が運も無ければ身体弱すぎる件は原作からしてそうなのかな?そもそも原作ファンはどのくらいこの作品に満足出来てるのかな?
でも、これ観ちゃうと他の三木孝浩監督作も観てみたくなるんだよね。ホント逆に一周して楽しくなってくる作品ってはなかなか狙って作るのも難しいし、これから程よい距離感で三木監督に注目したいですね。
まとめ
良かった点
- 一周まわってコメディに転化する異様な面白さ
- 狙った女優のキャスティング
悪かった点
- なんともザックリなストーリー展開
- ナレーション&風景描写過多によるノイズ
- 能年ちゃん無理してる&背伸びしてる感
- ツッコミどころ満載でもはやめちゃくちゃ
- 尾崎豊の『OH MY LITTLE GIRL』で全体の出来を誤摩化そうとするスタンス
評価:★ マジつまんねぇ... 純粋に評価するならこのレベルの珍作です。もう事あるごとに江ノ島の風景シーン差し込むのやめれ!
裏評価:★★★★ 予想だにしない展開で大いにツッコんだり笑えたという面ではかなりおすすめ出来る一作ですね!
[ 予告編 ]
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まだこの作品の方がまともに観れた覚えがある、決して面白くはなかったけど。原作を読んでただけに松潤の現実味の無さで台無しなった作品。
今一番観たい三木孝浩監督作。顔演技のうるさい本田翼といつもイマイチな東出昌大と三木監督との化学反応が楽しみ。ポテンシャルはかなり高い!
三木孝浩監督最新作。評判は凄くいいらしい!主役の男がパッとしなくて全然惹かれないですが。