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アバウト映画公園

"ほどほどの映画好き"アバウト男が最新作から旧作まで映画の感想をゆるめに書き綴る映画ブログ!たまに気になるドラマやおすすめ映画を紹介!基本大したことは書いてない。

【映画感想】怒り / 陰と陽の側面を持つ形容し難い『凄み』のある一作!役者の演技合戦も見もの!ちょいネタバレ

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あらすじ:八王子で起きた凄惨な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。(シネマトゥデイ)

 

製作国:日本 上映時間:141分 製作年:2016年

監督・脚本:李相日 原作:吉田修一 音楽:坂本龍一 企画・プロデュース:川村元気 

キャスト:渡辺謙 / 森山未來 / 松山ケンイチ / 綾野剛 / 広瀬すず / 佐久本宝 / ピエール瀧 / 三浦貴大 / 高畑充希 / 原日出子 / 池脇千鶴 / 宮崎あおい / 妻夫木聡 等

 

形容し難い『凄み』のある作品!

作家:吉田修一と映画監督:李相日の【悪人】タッグが再び、ベテランから若手まで今をときめく役者のドリームチームが集結した映画【怒り】。李相日(り・そうじつ)監督作は【スクラップ・ヘブン】と【悪人】の2作品しか観てないんだけど、思い返せばどちらともそれなりに好きで、本作を楽しみにしてました。

犯人は誰か描いてませんがそれなりに中身に触れてます。感想は、

 

豪華キャストと全体に渡る不穏な空気感で、ぐぐぐーっと作品内に観客を引きずり込む力作でした!ヘビーだなぁ。
形容し難い『凄み』があると言うか、象徴的な『怒』の文字が放つ人間の禍々しさと、そこに付随する膨らむ疑念・人間の弱さ・不条理さなどの『陰な側面』と、人と人とが関わり信じようとする気持ちの『陽な側面』の両方を感じるアンビバレンスな作品でした。

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千葉・東京・沖縄の3箇所に突如現れた素性の知れないな男3人、それぞれの場所で八王子で起きた凄惨な事件の逃亡犯じゃないか?と次第に疑念が顔を出し始める。
群像劇なんだけど、3箇所のストーリーが交わらないセパレートした物語を積み重ね、その構図が面白かった。別の場所の別の出来事なのにタイミングや陥る事態がシンクロしてて、観ている側もこの先どうなるんだろう? いや、もう3人とも怪しいわ!と息つく暇がない。

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その怪しい男に魅せられて、恋をして、疑念が一度生まれると膨らんで行って… 結果としてその人を信じられなかった・信じてたのに裏切られた事から生じる、どうしようもない『怒り』を通して、その後込み上げる『涙』の連鎖に胸を打たれた!

相手に向ける怒りと自分に向ける怒り、1つだけ『怒り』の向け方が違った。

 

適材適所・それぞれが最大限の好演!

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役者達の演技も申し分ない!それぞれがその場所でちゃんと生きているように、適材適所且つ最大限の好演を見せる!新境地の宮崎あおいとか、一人一人挙げてったらキリがない!みんな良い!

中でも広瀬すずちゃんの『あのシーン』は思わす目を背けたくなるほど真に迫っていた。急にギャスパー・ノエ作品!?みたいなショック。 女優広瀬すず凄いなと… 自分が広瀬すずちゃんの親なら多分気絶してる。

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あとは容疑者と疑われる素性の知れない3人の男を演じた、松山ケンイチ・綾野剛・森山未來のキャスティングが良かったですね!

『リンゼン・アン・ホーカーさん殺人事件』で逃亡していた市橋達也をモロ彷彿とさせる山神(八王子で起きた事件の容疑者)が、整形したであろう顔ということで、系統が似ている絶妙な塩顔男子を3人を集めたなと。

特に『目』ですね!表には出づらい内に秘めた一物を閉じ込めてるような、何を考えているのか分かりにくい目が、どこか惹かれるミステリアスな男としての説得力を持っていた。みんな『三白眼』だったらより雰囲気出てたけどね。

 

クオリティが高いからこその目立つ不満点

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と褒めつつも、不満点もチラホラとある。

『犯人はいったい誰なのか?』みたいなミステリー部分に重きは置いてない作品にしても、本作『犯人の正体』は、積み重ねられた物語を掻き乱す大事な要素であるんだけど、合間合間に挟まれる犯人像のミスリードがちょっと露骨過ぎたのは気になった。手配写真が場所場所でその人に似て見えるのは良かったけど。

 

それに加えて『説明的&補足的な回想シーン』が多い。監督と癖なのかな?描ききれない部分を『後出しな回想シーン』でフォローするというか。

指紋を鑑定してもらうシーンの後に、回想で『事件当時の犯人がコップを持つシーン』を入れ「はい、この時に付いた指紋が採取出来てるので、今指紋鑑定が出来るわけです!」的な見せ方はどうなんだろう…?その前にもお茶飲むシーン出してるんだし、そこでチラッと一瞬アップで見せれば済む事だじゃん。観客の理解への不安なのか?親切なのか?

他にも、妻夫木演じる優馬が涙を流すシーンの回想で、優馬と直人が夕暮れの窓際で話すくだりが『後出し』で見せられるので、それを前の流れでシレッと出しておけば「そんな想いを抱えて、あの時そんな事言ってたのかぁ…」って気持ちが湧き上がって、優馬と同時に泣けたのに…

後出しになると「彼はこんな事があったので泣いてるんです」って説明に見えちゃって、あまり見せ方が上手くないなぁと。その前に病室のお母さんを写さないって見せ方は出来てるのに。

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あとこの作品の押しである坂本龍一の音楽もちょっとやり過ぎかな。ボリューム大きめの壮大な音楽が「ここが感情のクライマックスで!」と言わんばかりの主張の強さ。

そして、1番気になったのは明かされた犯人の動機の部分。発端となった八王子の事件で残された血で書かれた『怒』の文字が意味する圧倒的『怒り』の理由ってなんだ?!と思って観てたんだけど、

その理由が『怒り』ってよりも『キレた』ってのに近く、元々そいつが隠して持っていたヤバさに原因があるように見えちゃって、それもあんまり納得しにくい。まぁその人が持った『怒り』の重さなんて他人には理解しえないって事も含まれてるんだと思うんだけど。

 

不満点とは言え全体的な出来が良い故に野暮に気になってしまう点なので、料理で言うと「美味いんだけど、この彩りのために散らしてあるグリーンピースは個人的にいらないんだけどなぁ」くらいのレベルです。

 

この世は『怒り』に溢れている

タイトルが『怒り』なだけに、秘密・嫉妬・嫌悪・イラ立ちなどから生まれる『怒り』に繋がりそうな様々な描写が作品内で見られた。

事件現場の蒸し暑さ/愛子と洋平父娘を雨の中車で迎えに来た池脇千鶴演じる明日香のイラツキ/警察署で食欲を失わせるピエール瀧演じる先輩の何気ない行為/コンビニ弁当のバランスの悪さ/米軍基地撤退のデモ/日に日に弱って行く母親の運命/空き巣に入られるゲイ友達/ベタついた手で冷蔵庫をさわる行為/噂が広まるこじんまりとした港町…などなど。

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この世は大なり小なり『怒り』に溢れていて、その中で無意識に『怒り』と距離を保ちながら何気なく生活を送っている。その『怒り』の積み重ねがふとした瞬間に爆発して『凄惨な事件』に発展してしまう日常に見え隠れする危うさを再確認した。最近、姉が弟を殺してバラバラにした事件もあったりして。

生活の中で匂わす繊細な描写と、それがなされる環境や場所のチョイスなど、こだわりある監督の気が行き届いてる作品でした。

 

まとめ

良かった点

  • 陰と陽の側面を持つ『凄み』と濃さ
  • バランスよく描かれた3つの場所でのそれぞれのエピソード
  • 豪華キャストによる演技合戦!
  • 場所選びや細かな描写など気が行き届いている感じ

悪かって点

  • 説明的な回想シーンの多さ
  • 犯人の動機

評価:★★★★  結構良かったぜ!

【悪人】も世間的に評価された作品だけど、それに匹敵する強さと凄みがありました!この作品含め邦画yearですね。

[ 予告編 ]

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関連&オススメ作品!

悪人

妻夫木聡・深津絵里主演の殺人犯の男と恋に落ちた女のヒューマンドラマ。良い意味で気持ちの拠り所のない作品。

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スクラップ・ヘブン

オダギリジョー、加瀬亮、栗山千明のバランスが魅力。ある事件をキッカケに知り合った3人の暴走する青春映画。

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I am ICHIHASHI 逮捕されるまで

市橋達也が逮捕されるまでを描いた実録モノ。主演はディーン・フジオカ。未見なのでこのタイミングで観てみても良いかも。

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顔を整形しまくって15年間逃亡していた福田和子の事件をモチーフにした映画。これも未見なので観たいな。

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