読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アバウト映画公園

"ほどほどの映画好き"アバウト男が最新作から旧作まで映画の感想をゆるめに書き綴る映画ブログ!たまに気になるドラマやおすすめ映画を紹介!基本大したことは書いてない。

【映画感想】オーバー・フェンス / 蒼井優の演技力に圧倒される!壊す男と壊れた女の交流が生む一筋の光!!

f:id:tyler-7:20160829020605j:plain

あらすじ:これまで好きなように生きて来た白岩(オダギリジョー)は妻にも見放され、東京から生まれ故郷の函館に舞い戻る。彼は実家に顔を見せることもなく、職業訓練校に通学しながら失業保険で生活していた。ただ漫然と毎日を過ごしてしていた白岩は、仲間の代島(松田翔太)の誘いで入ったキャバクラで変わり者のホステス聡(蒼井優)と出会い……。(シネマトゥデイ)

 

製作国:日本 上映時間:112分 製作年:2016年

監督:山下敦弘 原作:佐藤泰志 脚本:高田亮

キャスト:オダギリジョー / 蒼井優 / 松田翔太 / 北村有起哉 / 満島真之介 / 松澤匠 / 鈴木常吉 / 中野英樹 / 安藤玉恵 / 吉岡睦雄 / 優香 / 塚本晋也 等

 

『壊す男』と『壊れた女』の出会いと交流

ここ最近【苦役列車】【山田孝之の東京都北区赤羽】を観た流れから、楽しみにしていた山下敦弘監督作【オーバーフェンス】を観て来ました。

原作は綾野剛の代表作と言っていい【そこのみにて光輝く】の作者:佐藤泰志の『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』からなる函館3部作のラストだそうです。感想としては、

 

コンパクトながらも中身はそれなりに濃くて楽しめた!

上で挙げた山下監督作2作品に比べて、今作は笑える作品というよりかは、わりと真面目なトーンの作品。

バツイチで地元に戻って職業訓練校に通うオダギリジョー演じる白岩が、蒼井優演じる鳥の真似が得意な『壊れた女』聡と出会ったことで、ちょっとずつ変化し、兆しを見せる物語だ。

f:id:tyler-7:20160919232308j:plain

職業訓練校の閉塞感、やる気の感じられない建築化の訓練の後には、決まってこちらもやる気の感じられないソフトボールの練習。夕日が強く差し込む喫煙所でダベって帰る。たまに仲間と近くの飲み屋街に寄ったり。

そんな怠惰な毎日を、函館でしがなく送る白岩の生活感が上手く描かれていた。

【もらとりあむタマ子】の自堕落感だったり、山下監督は何気ない平坦な日常や生活感を出すのが巧い。是枝監督が清潔感のある感じなら、山下監督はちょっと侘しい感じというか。樹木希林みたいな『いるだけで武器になる』お婆ちゃんも出て来ない。

 

蒼井優の発するポテンシャルの高さ!

特筆すべきは蒼井優の演技力の高さですね!蒼井優演じるホステスと遊園地のバイトを掛け持ちしている聡はパッと見どこにでもいそうな女性なんだけど、関わるとその強烈な人柄がだんだんと分かって来る。

距離を一気に縮める小悪魔的なチャーミングさと、突如人が変わったように金切り声を上げるヒステリックな面を持つ情緒不安定な女だ。

どっちに振れるか分からない繊細さと危うさ、そして脆さを、表情・喋り方・張り上げる声・人の目を気にしない鳥の真似・自室で身体を洗うギョッとするシーン&その身体つきなどで体現して見せた。

f:id:tyler-7:20160919232334j:plain

こういう女性っているんだよね… 特にハッとさせられたのは、事が終わって2人でベッドで寝ている深夜に、ばっ!と無言で起きて相手が寝ているの関係なくドサドサと台所に向かうシーン。このニュアンス!とこの明かりの付き加減!しかも聡はそこで日頃から飲んでいるであろう精神安定剤?を飲むんだよね。

その後の、最高の時間から一瞬にして最悪の時間になる『あのシーン』はこの映画の白眉でした。劇場全体が「えっ...」と息を飲み凍った瞬間が印象深かったな。

こういう人と関わった事ない人には理解しがたい現実味の無いような人ではあるんだけど、個人的に凄く分かるなって。しかも遊園地での彼女は初対面か?ってくらいの冷め様で、前回会った時の調子を取り戻すのに少し時間がかかる辺りもリアルで。

f:id:tyler-7:20160919234710j:plain

親が聡って男の名前を彼女に名付けたり、実家なのに部屋が隔離されていて、深夜に大声を出しても誰も見に来ないって、そこで彼女の家庭環境を察する事が出来る。身体に傷が無かったのは救いというか安心した部分だけど。都会よりも地方の田舎にいそうな感じも出てたなぁ。

『メンヘラ』って差別用語らしいので、ここではヘラった女性って言い方にするけど、本作の前に観た【怒り】でも近いようなヘラった女性を宮﨑あおいが新境地として好演していたんだけど、

あの演技が表層的に見えてしまう程、蒼井優の観察力とそれを演技として外に出すアウトプット力・秘めてるポテンシャルの高さを感じました。キャスティングや監督の演出も相まって、今年のベストアクトレス級の演技でした。

 

『良い人』に見え隠れする闇

f:id:tyler-7:20160921014907j:plain

蒼井優の話が多くなってしまったけど、オダギリジョー演じる白岩も、優香演じる元妻を『壊してしまった男』として、時折見える彼の抱える曇ったまま闇を、一見穏やかで『良い人』の中に忍ばせる見せ方も上手かったですね。同じ訓練生のおじさんが白岩にやたら気を遣ってたり、あの殺伐とした居酒屋での空気感とか。

ひょっとしたらこいつもこいつで、己の危うさが出ないギリギリの均衡を保ちながら生活してるのかもなって。その危うさも見る人が見れば分かるのか、聡もその匂いを感じ取って白岩に興味を持つみたいな。

衝突も含め『壊す男』が『壊れた女』によって直されていく不器用で足の覚束ない2人の関係が、物語の密度を高めいたなと。

f:id:tyler-7:20160921014917j:plain 

山下監督特有の『ふりかけ → お魚見るー?』のくだりや遊園地のガキだったり、クスッとさせるシーンももちろんあるし、鳥の羽が舞う幻想的なシーンもあったりで、どうしようもない現実ばかりを見せる辛い映画にはなってなかったですね。

恋愛にチャリンコの2人乗りシーンはベタだけど、こういう画になるシーンが1つ2つあると観てる側としては嬉しい。

 

おっさんはその辺の素人だと思ってた

f:id:tyler-7:20160921014951j:plain

スマホじゃなくガラケーを使ってたり、オシャレとして海外サッカーチームのユニホームを私服で着てたり、松田翔太演じる代島の髪型然り、時代設定がイマイチ分かりにくかったけど、そのちょっと古めの感覚がむしろ函館感なのかなとも思ったり。

松本人志の『働くおっさん劇場』に出て来そうな、セリフが異常に聞き取りにくい職業訓練校の1番年長者の勝間さんは、絶対その辺で見つけて来た素人のおじさんだろうと思ったけど、調べてみたら鈴木常吉(ex セメントミキサーズ)ってアーティストの人でしたね。演技経験は無さそうだったけど実に良い味出してました。

 

まとめ

良かった点

  • 職業訓練校などのリアルな日常&冴えないルーティン感
  • 蒼井優の卓越した演技力
  • 危うい男女の交流と兆し
  • 劇場が凍り付いた最高からの最悪な展開

悪かった点

  • もう少し聡のことを知りたかった
  • 合間合間に出て来る不協和音的なBGMがあんまり良くなかった

評価:★★★★  結構良かったぜ!

蒼井優の演技、そこから生まれる思わず観客が一斉に『凍り付いた瞬間』を是非味わってもらいたいので、劇場鑑賞が俄然オススメです!

[ 予告編 ]

[ 映画館を探す ] 「オーバー・フェンス」の映画館(上映館)を検索 - 映画.com

 

関連&オススメ作品!

苦役列車

最近観た山下監督作。メチャクチャ笑える底辺映画!今作の蒼井優に匹敵する森山未來の実在感!役者の底力を引き出すのが上手いのかな。

f:id:tyler-7:20160921021306j:plain


そこにみにて光輝く

呉美保監督作、綾野剛/池脇千鶴主演。こっちの方が函館という土地をより感じた。どうしようもない男と女の物語としては共通してる。また観直したい!

f:id:tyler-7:20160921021422j:plain

 

怒り

ヘラった女をあの宮﨑あおいが好演。広瀬すずも頑張った!みんな良い!あ、これにも森山未來・綾野剛出てるな。

f:id:tyler-7:20160921021739j:plain

 

恋人たち

橋口亮輔監督作。『男の再生の物語』みたいな部分では、どこか通じるモノがありました。『THE生き辛さ映画』。

f:id:tyler-7:20160921021835j:plain


ぼくのおじさん

山下監督の最新作が11月3日公開!…って凄いな。どんなスパンだよ。松田龍平主演、こっちはかなりライトなコメディ作品。

f:id:tyler-7:20160921022022j:plain

 

にほんブログ村 映画ブログへ  1日1クリックお願いします!