アバウト映画公園

"ほどほどの映画好き"アバウト男が最新作から旧作まで映画の感想をゆるめに書き綴る映画ブログ!たまに気になるドラマやおすすめ映画を紹介!基本大したことは書いてない。

【映画感想】淵に立つ / 今年一番の問題作!ある家族が悲劇を通して『そして家族になる』物語!ネタバレなし

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あらすじ:鈴岡家は郊外で小さな金属加工工場を営み、夫の利雄(古舘寛治)と妻の章江(筒井真理子)、10歳の娘・蛍(篠川桃音)は穏やかに暮らしていた。ある日、利雄の古い知り合いで、最近出所したばかりの八坂草太郎(浅野忠信)がやってくる。利雄は妻に何の相談もなく彼に職を与え、自宅の空室を提供する。(シネマトゥデイ)

 

製作国:日本/フランス 上映時間:119分 製作年:2016年

監督・脚本・編集:深田晃司

キャスト: 浅野忠信 / 古舘寛治 / 筒井真理子 / 太賀 / 三浦貴大 / 篠川桃音 / 真広佳奈 等

 

オススメするが、観たらきっと後悔する!

どうもアバウト男です!

タイトルで『今年一番の問題作』なんて陳腐で在り来たりな言葉を使って申し訳ない。ただ一つ言える事はここ最近観た【シン・ゴジラ】【君の名は。】【怒り】などの作品が霞むくらい、思わぬ角度から映画的体験&衝撃を食らってしまったからだ。

その作品とは、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞に輝いた深田晃司監督作【淵に立つ】。踏み込んでますが極力ネタバレなしの感想は、

 

過去、映画を観てここまで後悔したことは無い!

もちろん駄作を観て後悔する事は山ほどあるけど、傑作を観て後悔するという感覚は初めて。傑作なのに後悔する、オススメしたいのにできれば観て欲しくないという、何ともアンビバレンスな未体験の感情に落ちいる。

と言うのも観ている間、もうこれ以上見たくない画と展開の連続に「ごめんなさい、ごめんさい」と心の中で唱える程。これキツさが続くのであれば、劇場を出て行くところだった。それくらい映画という拷問であり暴力であり、現実を突きつけられた。

ホラーやサスペンス映画を好み、安全な場所から軽い気持ちでその手の作品を楽しんでいたツケが回って来たのかのように、深田監督から手痛い『しっぺ返し』をされたような気がした。作中で古舘寛治さんが繰り出す乾いたビンタみたいに。

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利雄・章江と10歳の娘からなる有り触れた3人家族の元に、ある日八坂という男が訪れる。旧友である八坂を否応無く受け入れる利雄は、八坂に工場(こうば)の仕事を与え短期間家に住まわせる事を決める。そこから奇妙な3人+1人の生活が始まる。

これだけ見ると「はいはい!しがない家族の元に何やら正体不明の男が不安分子として入り、何か良からぬ事が起こるうだろうな。サイコパスものかな?」なんて思いながら観ていると、案の定、八坂は家に来る前に長いこと服役していたらしく、家主である利雄も何か弱みを握られてるらしい。

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次第に章江と蛍からも受け入れられ、家族に馴染んで行く八坂。共同生活から生まれる男と女の過ちをキッカケに... ついに八坂はある決定的な行動を起こす。ここまでが王道パターン。で、場面は変わり8年後...

こっからが違った!

マジかぁ… 後半が始まったその瞬間、監督の事を呪いました。画一つで観客に強制的に覚悟させる力。ここからが意地悪で衝撃的な現実の始まりでした。

怖いとかって言うよりもすごくキツいです。

 

深田監督の巧みな演出

深田監督作は今作が初めて。その深田監督ですが巧みだな〜と印象を受ける。まず「あ、これは期待できるな」と思わせるタイトルの出方から始まり、その後の前半パートはよくある『正体不明の訪問者モノ』『一緒に住む事になった不審人物モノ』の、ホラー&サスペンス的な演出がちゃんと冴えている。

たとえば、蛍の習い事のオルガンの曲で、八坂が家族に受け入れられた(逆に言うと浸食して行く)事を示したり、

八坂が着ている真っ白なYシャツと、仕事着の真っ白いつなぎが妙に画面から浮いてて存在としての違和感を漂わす。決定的な場面で服の色が白から『赤』に変わり本性が現れ、『白』は分かりやすく偽善であり、羊の革を被っていたことを画一発で伝える。本作『赤』が重要な部分で使われてるのも狙いだろう。

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他でいうと後半、夫婦の言い争いが終わったタイミングで「ある声」を入れたり、シーツが上から落ちて来るシーンでは思わずはハッとさせられたり。車内での会話の最中、絶妙なタイミングでトンネルに入り、しゃべっている章江の顔が影で黒く見えなくなるなど、

画・展開・演出、全てにおいて監督の意地悪さが冴え渡り、観客をこれでもかと苦しめる!

それは一種、現実に起こりうる避けられない不条理さでもあり、事件の被害者が負う癒えようの無い深く刻まれた傷でもある。

しかも辛い後半になって、元々ほころびがあり八坂によって決壊した家族が、本来あるべき家族として再生していく皮肉さも込みで、キツいけど話がよく出来ている。。

 

ダメ押しだったのが、

現実的な内容にふと差し込まれる、

こうあるはずだった光景

を見せられた時には落涙してしまった。これはズルい!というか、こういうビジョンってきっと当たり前に見るものなんだろうね。辛い現実、どうしてこうなってしまったんだろうと思いながら、本来そこにある筈だった光景を夢見てしまう。グザヴィエ・ドラン監督作【Mommy/マミー】のクライマックスや、最近だと【シング・ストリート 】にも見られたけど。このタッチの作品では勇気ある映像の入れ方だなと。

そして現実に引き戻されると、タイトルにもあるように観客も淵に立ちたくなる。追体験させられる映画ってこれまでにも観て来たけど、ここまで映画を観ている最中に「蒸発してこの世から消えてしまいたい…」なんて思ってしまう映画体験は初めてだし、精神がすり減ったのは間違いない。

 

筒井真理子さん劇場!

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キャストでいうと、ナイスキャスティングの上で魅せる古舘寛治の静と動を使い分けた演技や、浅野忠信の得体の知れない凄みは言うまでもないけど、事実上の主役だったのは筒井真理子演じた章江だった。特に見た目の変化の説得力!

冴えない人妻兼母親から、八坂が家に住みようになったからの色気と若返り、そして8年後の別人のごとく変わってしまった枯れた姿。この見た目の変化と、それに呼応するような内面の変化に、8年前の出来事の大きさと、過ごしてきた壮絶な8年間の苦しみや苦労をパッと感じさせる。痺れました。

逆に、一家族として作品に没入できた事を考えると、普段から見慣れている女優さんじゃないのが功を奏していた。

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それと8年後の工場に入ってきた新人の山下を演じた太賀。この子初めて見たなと思ったんだけど調べたら【桐島、部活やめるってよ】や【私の男】など数々の映画に出演してて、12月に公開される蒼井優主演映画【アズミ・ハルコは行方不明】にも出演するらしく、期待の若手なんですね!

決してイケメンじゃいところに好感が持てるな〜と思いきや、なんと門脇麦ちゃんと恋仲らしいじゃないか!?それでいて父親は【アウトレイジ】の中野英雄って。。もう言う事はありません。

あと、成長した蛍役の真広佳奈ちゃんの演技も「大丈夫か?」と思うくらい印象深い。可愛いな!

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真広佳奈

 

なんだかんだ疲れました。映画を観るのにも目撃者として『見てしまう覚悟』はするべきだなと。個人的には現時点で今年ベスト5に入るようなグッと来る作品でした。

オススメするけど、生半可な気持ちでは観ないでください!見たらあなたも『被害者』となる。

 

まとめ

良かった点

  • 『正体不明の訪問者』的ホラーから、これでもかとキツい現実を食らわす作風
  • 『起こって欲しくない』『見たくない』展開』の連続
  • 深田監督による巧みな演出の数々
  • 限られたキャストの好演、特に筒井真理子さんの説得力!

悪かった点

  • 自分から観に行ってなんだが、こんな『現実』見せんじゃねぇ!と思わされる。これもいい意味で。

評価:★★★★★  最高!フォーー!

よく言う『最低で最高』な作品でしたね。これを機に深田監督の過去作を全て観たくなるし、これから監督の新作は劇場に駆けつけるでしょうね!それくらい完成度が高くて、精神をズタズタに引き裂かれるような作品でした。

[ 予告編 ] 

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ザ・ゲスト

前半はこの【ザ・ゲスト】のような『怪しい訪問者系ホラー』かと思ってました。もちろんその要素はあるけど、どちらかというと本作はその先に突きつけられる、家族のあり方や、事件に縛られ続ける被害者の苦しみを描いていた。

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セブンス・コンチネント

絶望家族映画で思い出すのはこれ。衝撃と余韻はこの映画に匹敵する。

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ほとりの朔子

福田監督の過去作。本作の太賀も出ている二階堂ふみ主演作。レンタルとかですぐ手がつけられるのであれば観たい!

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