アバウト映画公園

"ほどほどの映画好き"アバウト男が最新作から旧作まで映画の感想をゆるめに書き綴る映画ブログ!たまに気になるドラマやおすすめ映画を紹介!基本大したことは書いてない。

【映画感想】無垢の祈り / 芸人BBゴローの強烈な演技!殺人鬼がヒーローになりうる少女の劣悪な人生!微ネタバレ

f:id:tyler-7:20160925154610j:plain

あらすじ:学校でいじめられている10歳のフミ(福田美姫)。家庭では義父に虐待され、夫に暴力を振るわれる母は新興宗教にのめり込み、フミには心が安らぐ場所がなく、助けてくれる者もいなかった。ある日、フミは町で連続殺人事件が起きていることを知る。殺害現場を巡ることにしたフミは、そこである人にメッセージを残し……。(シネマトゥデイ)

 

製作国:日本 上映時間:85分 製作年:2015年

監督・脚本:亀井亨 原作:平山夢明

キャスト:福田美姫 / BBゴロー / 下村愛 / サコイ / 綾乃テン / 奈良聡美 / YOSHIHIRO / 幸将司 / 高井理江 / シゲル / 三木くるみ / 河嶋遥伽 等

 

胸糞映画に待ちわびる残酷な希望!

どうも、アバウト男です!

やっぱり今年の邦画はおかしいですね... この作品の前に観た【淵に立つ】が最低で最高だったのに、立て続けにこんな作品が観られるなんておかしい。何か危険信号的なメッセージでも送られてるような気さえする。

そんなことを感じた、平山夢明著『独白するユニバーサル横メルカトル』の短編を映像化した亀井亨監督作【無垢の祈り】。

いつものようにラストのネタバレはしてなですが、それなりに踏み込んでいます。作品の感想は、

 

これぞ胸糞(悪い)映画!しかも結構やり切っている!

さすがにR18。実は本作も【淵に立つ】と同じくキツい映画でした。厳密にはキツさの種類が違うんだけど、自分が想像しうる『日本のどこかにある劣悪な家庭環境』を何倍も濃くしたような現実味の無い設定に、ただただ事の顛末を苦い顔をしながら見守るしかないという、もどかしさを抱えながら終始観てました。

※こっからエグい表現が出てくるので苦手な人は読まない方が良いかも。。

f:id:tyler-7:20161011000850j:plain

10歳のフミは母親と義父との3人暮らし。義父は頻繁に母子に虐待を加え、ろくに働かずスロット三昧。母親は病んで新興宗教にハマり、母親が仕事で外出してる間に、フミは義父にイタズラをされる。

学校に行けばいじめられ、先生さえ見てみぬふり。帰り道では太った汚い変態オヤジにイタズラされ、仕舞には不登校。食事は具のないインスタントラーメンを自分で作り食べる日々を送る。

誰の助けも届かない絶望的な環境にいるフミは、近所で多発する『バラバラにして骨だけを持ち去る』連続殺人鬼に助けを求めようと街を彷徨い続ける。

f:id:tyler-7:20161011002227j:plain

もう、フミが置かれてる状況からして聞くに耐えないくらい『最悪』の詰め合わせ。『最悪』のストレートフラッシュ!これは感情移入する余地もないくらい胸糞な内容なんで、確実に観る人を選びますね。

ただ『面白かった』というと語弊があるんだけど、単に『エグい』だけが売りの映画ではなかった。

 

芸人ではなく役者BBゴローが魅せる圧倒的ゲス感!

芸人:BBゴローをご存知だろうか?一番分かりやすいとこで言うと『稲川淳二のモノマネ』をしているピン芸人だ。そんな彼が演じたのが本作、強烈な存在感をみせる義父のクスオだ。

実は本作、一番の功績がまさかのBBゴローなんです!

正直、彼の演技には驚きました!調べた限りでは演技経験ゼロの、本作が役者初挑戦ぽいんだけど、重ねた芸歴にモノマネ特有の観察眼と憑依を武器に、素人さを微塵も感じさせない堂々とした立ち振る舞い。ぶっちゃけ本年度のベストアクター級の演技でした。怖い!

f:id:tyler-7:20161011004859j:plain

クスオは、キャラ的な凄みで言うと【ノーカントリー】でハビエル・バルデム演じたアントン・シガーに匹敵するような、作品を支配する『絶対的』存在感。邦画だと【黒い家】の大竹しのぶ級。恐らく近年の日本映画史に残るキャスティングと好演なんじゃないかな?

若干ノイジーで苦みのある声といい、おじさん特有のタルんだ体つき、ぬそっとした犯罪者顔、そこに乗っかるそぐわない髪型などの見た目に、一番の要となる『暴力』も自然。

フミや母親に対しての容赦ないビンタや叩き・髪掴みなど、暴力に対しての躊躇が全くない。日頃から暴力を働き慣れてる人のナチュラルさを感じた。「こいつだけは1秒でも早く地獄に堕ちてくれ!」と思わせる存在感でした。

 

BBゴローだけじゃなく、終始ヒドい目に合う主役のフミを演じた福田美姫ちゃんは大丈夫なのか?演技とはいえこの悲惨な世界観に、女優辞めますってなりかねないだろう。夏休み返上で撮影に挑んだとか。ホントよく頑張った!

f:id:tyler-7:20161011011849j:plain

それとフミの母親役を演じた下村愛も、クスオを旦那にしてしまうダメ女っぷりを体現!下村愛は2015年から改名した元AV女優の穂花です。その節はお世話になってました。役者としては【片腕マシンガール】の変な役しか覚えてないけど、終盤の豹変ぶりが良かった!

 

ロケーションや音の使い方が良い!

本作、こんなドギツイ内容を魅力的に引き上げているのが、画の良さと音の使い方。

まずフミ一家が暮らすのが工業地帯。この人気のない閑散とした工業地帯がどこか閉鎖的なディストピアに見える。意識的にフミの逃げ場のない状況と重ね、彩度低めで緑がかった暗い画ともよくマッチしていた。

f:id:tyler-7:20161011012614j:plain

そこに時たま乗ってくる「ガギン!ガゴン!」と、けたたましく鳴る機械音が不安と緊張感をより煽る。ラーメンを作る時につけるコンロの「カチっ!」と鳴る音で、寝ているクスオを起こさないかドキドキさせたり、エンディングの曲の美しさなど、音の面も注力されていた。

 

▶この部分は知らないで観た方が良い!

で、この作品とても印象的で効果的だったのが...

人形の使い方。

クスオがフミに働く性的イタズラの場面はさすがに見せられないので、その役目をフミを模した気味の悪い人形に変わってもらう。クスオが傀儡のような人形の胯を開かせたり舌を這わせたりなどの行為と、人形の見た目の気味の悪さも相まって全てが悪夢のよう。

しかもこの映画では、そのやり取りをフミ自身が離れたところから俯瞰して見ているという、変わった見せ方にしている。

これはクスオのイタズラに対してフミの自己防衛本能が働き、その辛さを別の人格(人形)に担わせ本人は端から見ているような、そんな解離性同一性障害を起こしているくらいキツい行いの描写でもあるのかな。

想像だにしない光景でした… よく思い付くな。亀井監督作は本作が初めてでしたが、ここまでのやり切りぶりに好感が持てた。ちなみに人形使いは綾乃テンという方でした。

f:id:tyler-7:20161011233009j:plain

クスオの下劣な存在と、生きたまま人を解体する殺人鬼の、2つのベクトルの恐怖を同時に描きながらも、どこかで残忍な殺人鬼の存在を待ちわびてしまうほど、クスオと共に生きる幼い少女には逃げ場のない地獄のような日々。

フミは近所の殺人現場を巡り、殺人鬼への切なる思いをチョークで地面に書き残す。その姿が辛く切なくて… そして迎える、

ラストも壮絶です!

フミが大声で発したあの言葉が2重の意味で突き刺さる。グロ描写も音楽も結末も素晴らしい!これは亀井監督の自主映画だからこそなせる『あまりにも残酷』な映画でした。

 

最後に、刑事役で出演もしている原作者:平山夢明氏の鑑賞後のコメントを。「機関車に踏み潰されたような衝撃。上映直後、暫し言葉がなく、正直、死ぬかと思った。もう少し手加減しないと観て死ぬ人が出るなと思った。」

 

まとめ

良かった点

  • この内容を自主映画としてチープさを感じさせずにやり切った監督の心意気
  • BBゴローの息を飲む怪演
  • ロケーションや音の使い方など監督の拘りと演出とが上手くマッチしている
  • 記事で隠しているアレの使い方

悪かった点

  • 中盤少しだけタルかったかな

評価:★★★★  結構良かったぜ!

「若者ウケしそうな園子温の『冷たい熱帯魚』みたいなエグい映画作ろうぜ!」的な軽いノリで作られた作品では決して無いです。これも『目にしてしまう覚悟』がいる映画です。

観終わった後に、こんな作品を観るためにわざわざ小さな映画館に足を運ぶ男達が、みんなクスオや序盤に出る小児性愛者(ペドフィリア)のオヤジみたいに見えてしまって、なんとも気持ち悪いゾッとする感覚に襲われた。

[ 予告編 ]

[ 映画館を探す ] 「無垢の祈り」の映画館(上映館)を検索 - 映画.com

 

関連&オススメ作品!

淵に立つ

【淵に立つ】と【無垢の祈り】を連チャンで観たので軽く病みました。奇しくも3人家族で10歳の娘って部分が共通している。

 

ノーカントリー

アントン・シガーのサイレンサー付きショットガンや、牛を殺す重たい道具みたいに、クスオにもとある凶器が持たされます。それは観てのお楽しみ。

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

 

 

独白するユニバーサル横メルカトル

これ読んでみたいですね。ちなみに僕が持っている平山夢明作は『ダイナー』『他人事』『いま、殺りにゆきます』の3冊。

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

 

にほんブログ村 映画ブログへ ランキング参加してます!

ブックマーク/シェアありがとうございます!