あらすじ:独身者であれば身柄を確保され、とあるホテルへと送られる世界。そこでパートナーを45日以内に見つけなければ、自身が選んだ動物に姿を変えられて森に放たれてしまう。そのホテルにシングルになったデヴィッド(コリン・ファレル)が送られ、パートナー探しを強いられることに。期限となる45日目が迫る中、彼はホテルに充満する狂気に耐え切れず独身者たちが潜んでいる森へと逃げ込む。そこで心を奪われる相手に出会って恋に落ちるが、それは独身者たちが暮らす森ではタブーだった。(シネマトゥデイ)
製作国:アイルランド / イギリス / ギリシャ / フランス / オランダ / アメリカ
上映時間:108分 製作年:2015年
監督・脚本:ヨルゴス・ランティモス
キャスト:コリン・ファレル / レイチェル・ワイズ / ジェシカ・バーデン / オリヴィア・コールマン / アシュレー・ジェンセン / アリアーヌ・ラベド / アンゲリキ・パプーリァ / ジョン・C・ライリー / レア・セドゥ / マイケル・スマイリー / ベン・ウィショー 等
『独身は罪』な世界に生まれついた男の運命!
どうも、アバウト男です!
本作の公開当時、たまたま一緒に飲んだ映画好きさんから『現時点で2016年のベスト!』の作品として上がった【ロブスター】。
劇場鑑賞はスルーしてしまったが、その後好評の声もチラホラ聞こえてきて、レンタルDVDでこのタイミングにてようやく鑑賞。
ネタバレは避けてますが勘のいい人なら気付いてしまうかも。感想は、
なんちゅう世界だよっ!!!
本作では『独身=罪』という呆然としてしまうディストピアな世界。その運命に翻弄される男を、メタファーたっぷり且つシュールに描いた作品だ。特に僕と同様『独身男』は心の準備をしてからの鑑賞をオススメする。
本作の魅力は『独特な世界観の設定』だ。この世界では、独身は男女関係なくあるホテルに入れられ、その施設内で45日以内にパートナーを見つけカップルになる事が義務付けられている。
カップルが成立すれば、その後2人きりで2段階ある『カップル部屋』で過ごし、問題なければ晴れて世に解き放たれる… その後結婚するのかな?
一方、45日間でパートナーを見つけられなかった人間は、自分の好きな動物に姿を変えられてしまう。ちなみにタイトルの『ロブスター』は主人公デヴィッドのなりたい動物です。
45日の間には麻酔銃で『森に逃げ込んだ独身(レジスタンス)を狩る』ハンティングの時間があり、1人狩るごとに猶予が1日伸びるような取り組みもある。
この諸々のシステムは『少子化問題』から来るものだろう。そして『パートナーを見つけられない人間(独身)は動物に変えられてしまう = 人間失格』という烙印を押される。
「人間で相手を見つけられないなら、動物に降格し同種の相手でも見つけて自然の摂理に貢献してください」または「動物になって残りの余生を楽しんでください」となかなかキツいメッセージが映画から投げ付けられる。
『個性』と狂気めいたユーモア
この作品のパートナー探しの興味深いところは、『同じ個性を持つ者同士じゃないと基本的に結ばれない』という暗黙のルールというか価値観が存在する。
足が悪い人、滑舌が悪い人、鼻血が出やすい人、心ない人など、クッキー好きな人… 個性の共通項によって相手に興味を持ち、分かりやすく好意を抱くキッカケとなっている。
逆に動物になりたくないがために、個性を偽ってパートナーになる者もいて、その後関係が上手く行くかはその人次第。
この個性はまんま『性格や価値観』に置き換えられる。無理に人に合わせても自分が苦しいだけで、個性(性格や価値観)の合う人ばかりを探し過ぎて、結局いつまで経っても相手がいないってのは現実でも良くあること。
その『恋愛全般』や『独身の脱却と結婚に至る過程』を簡略化して、洒落た映像として分かりやすく落とし込んで見せる辺り上手いなと。
表向きはブラックコメディなテイストで見せられるんだけど、どちらか言うとユーモアってよりはシュールで狂気。僕個人としてはユーモアの部分が狂気めいていて全く笑えな無かった。
恋愛する資格のない者が集う森
少子化が進行すれば訪れるかもしれない、監督の考えたディストピアな設定を、これから思い存分転がして行くんだろうなと思いきや、これが意外にも呆気なく手放してしまう。デヴィッドがホテルを抜け出し、森へ逃げてしまうのだ。
森では、同じように逃げ込んで来た独身達からなるレンジスタスのルールの中で生きなければならない。
そのルールとは恋愛禁止。恋愛という宿命(ホテル)から逃げだして来た者に、恋愛する資格など無いという戒めでもあるのだろう。
ユニホームのように揃いのレインコートを着たり、ルールを破った者に下される罰とかエグくてそれなりに良いんだけど。生活必需品を買ったり身内に会いに森から街に身分を偽って出向いたり展開があるるものの、話的に若干の手詰まり感は否めない。
デヴィッドは、レジスタンスの中で『近視の女』と出会い互いに惹かれ合っていく。2人は恋愛禁止のルールを破ってしまい、彼女は罰として酷い仕打ちを受けることになる。というか恋愛を隠す素振りがないのもどうなのかなと。
そのまま一気にラストに向かうんだけど… 結末があんまり納得いかなかったかな。
デヴィッドは彼女がされた事と同じ状況になるために、アレで自らのアレをアレするという、とても見ていられない結末を迎える。
いやいやいや、ダメダメダメ!!
この行為は是非とも実際に観て欲しい。
結末で提示させられる監督の恋愛観!
今まで『同じ個性を持つ者同士じゃないと結ばれない』という恋愛観を皮肉込みで批判的な視点で描いてるのかと思いきや「これが監督の恋愛観なんだ!?」と言うことに、ラストの結末で気付かされる。
愛する人と同じになる美しさ?同じ痛みを共有する美しさ?そりゃ映画的には分かるけど…
個人的には「お前彼女を愛してるなら、その行為は絶対やっちゃダメだろ!」「彼女を支えて行けよ!補い合いだろ!」と、そんな風に感じて最後の結末は乗り切れなかったですね。
でもエンドロールが出るタイミングをわざと遅らせているのは上手かったですね!むしろこれがやりたいがための結末に見えるほど。
ラストの結末にノレるかノレないか、『自身の恋愛観が炙り出される』って言うと大袈裟でしたが、設定のメタファーの読み取り方も人によって変わる作品どなと思います。
もうちょっとホテルでの動物になるか?ならないか?なる時の悲惨さとか、そっちをもっとほじくって欲しかったな。
まとめ
良かった点
- 内容的にキツイが、他の映画では味わえない魅力的な世界観と設定
- 土地や建物・設定を活かした画の良さ
- 狂気めいたユーモア
悪かった点
- 犬をアレしちゃう件はちょっと…
- ラストの結末はいまいちノレなかった
評価:★★★ 普通に楽しめました。
なかなか他じゃ味わえない世界観を味わえるので一見の価値アリです!
僕個人としては、動物になるくらいなら、利害関係の一致する同じような女性を探し、ドラマ【逃げ恥】のように2人で協力し、契約結婚という形でホテルから抜け出そうとするな。残念ながらそんな人はいない世界です…
[ 予告編 ]
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ヨルゴス・ランティモス監督の過去作。観てみたい!
久々にコリン・ファレル主演映画を観たので、好きなコリンファレル主演作を2本紹介。
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ダブリン上等!
今回の感想で入れられなかった一言:
ポップアップトースターの使い方がフレッシュ!