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アズミハルコは行方不明【ネタバレ映画感想/考察】行方不明の真の意味とは?イタくて痛い物語!

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あらすじ:地方都市在住で27歳独身の会社員安曇春子(蒼井優)は、実家で両親と高齢の祖母と猫のみーちゃんと共に暮らしている。祖母の介護でイライラしがちな母親のまき散らす険悪な雰囲気が漂う家は、彼女にとって安らげる場所ではなかった。一方、成人式で中学時代の友人ユキオ(太賀)と再会した20歳の愛菜(高畑充希)は、流れでつい体の関係を持つ。(シネマトゥデイ)

 

製作国:日本 上映時間:100分 製作年:2016年

監督:松居大吾 原作:山内マリコ

キャスト:蒼井優 / 高畑充希 / 太賀 / 葉山奨之 / 石崎ひゅーい / 菊池亜希子 / 山田真歩 / 落合モトキ / 芹那 / 花影香音 / 柳憂怜 / 国広富之 / 加瀬亮 等

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イタくて痛い女性の物語!

同名小説を松居大吾監督が映画化した【アズミ・ハルコは行方不明】。山下敦弘監督作【オーバーフェンス】で好演を魅せた蒼井優が【百万円と苦虫女】以来の単独主演ということと、大まかなあらすじだけを読んで気になって観て来ました!

自分なりの考察をしながらの感想になるので、今回はガッツリとネタバレしています。

 

感想は、

伝わっては来るけど難しい!

本作は2人の女性の恋愛を通し、生きづらいさを感じてる女性の肩の荷をそっと降ろす手助けになるような作品に感じた。観客に押し付けずあくまで1つの方法として。

ぶっちゃけ決して分かりやすい物語ではなかった。なんだけど作品から浮き彫りになる『メッセージ』は確かにあって、敢えて断言するような事はせず余白の部分を残した作りになっている。

なのでスカッとするような分かりやすいカタルシスは無いし、各々の感じ方や解釈によって賛否や評価がバックリ割れるだろう。それでいて観た人同士語り甲斐のある作品だった。

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本作は2人の女性の物語を時系列をいじり、行ったり来たりするツギハギな構成なので、話を追うのに集中力がいる。決して分かりにくくはないけど。

1つ目のエピソードは、どこにも居場所がないようなアラサー会社員の安曇春子(蒼井優)の物語。家には認知症のおばあちゃんと両親との4人暮らし+猫。

会社に行けば女性蔑視のセクハラ上司の発言を受け流すような冴えない暮らしの中で、幼なじみの曽我と身体を重ねる関係へと発展、その後ある事がキッカケで行方不明となる。

もう1つは、安曇春子が行方不明になってからのエピソード。いかにも頭の悪そうなギャルで20歳の愛菜(高畑充希)の物語。

成人式で中学の同級生ユキオを出会い、その流れでヤッてしまう。つるむようになった愛菜とユキオはビデオショップで同級生の学を見つけ、ユキオと学はグラフィティユニット『キルロイ』を結成し、3人で行方不明となった安曇晴子の手配書をモチーフとしたグラフィティアートを街に残して回る。

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特に前半は、安曇春子の『行方不明になる前』と『なった後』のエピソードが時系列をづらしながら交互に展開され「これ、どう繋がるんだ!?」と思わせる予測不能なストーリーに翻弄され、物語にぐっと惹きつけられる。

その2つのエピードが、キービジュアルにもなっている安曇春子のグラフィティ(スプレーアート)と、街の男達に暴力を振るって回る女子高生軍団『少女ギャング団』によって少しづつ繋がって行く。

 

安曇春子と愛菜の2人の共通点

話が進むにつれ徐々に見えて来るのは、安曇春子と愛菜の共通点だ。春子は曽我・愛菜はユキオ、2人とも身体を重ねた男を好きになってしまう。がしかし、当の男からはていの良いセックス相手としか思われていなかった。のめり込んでしまった男から決定的に拒絶され、失意の底に落ちる2人。ここでようやく物語がリンクする。

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そこには『郊外の街』特有の人間関係の狭さや、狭さならではの閉塞感、閉塞感ゆえに高まる依存度、誰と誰が付き合ってるだの寝ただの噂話もすぐ広まる。

この話は単に男に弄ばれる女の物語では無く、そういう『郊外の街』が持つしがらみや『嫌な側面』を上手く取り入れて描いていた。

【オーバー・フェンス】でも見せた蒼井優演じる女性主人公が移動手段としてマイカーを普段から乗り回りしてるあの感じだったり、店に行けば学生時代の同級生が働いていたり、地元の「結婚すんの早いな〜」とか「子供もう2人もいんの?」みたいなあのニュアンスに、ついつい共感してしまう。まさに僕の地元があんな感じ。

 

『行方不明』の真の意味

安曇春子はどうして行方不明となってしまったのか。それは彼女の『存在意義の消失』だった。家も会社も居心地は良くなくて、唯一のよりどころであり好きだった曽我につき放され、安曇は完全に存在意義を無くしてしまった。

それと同時に、会社に行けば安曇春子という『個人』としてではなく一括りの『女』としてザックリと扱われるような日々。

これは周りの男から、大きくみれば世間から誰にも見てもらえない存在になってしまったということを『見てもらえない透明人間にような存在=行方不明』として表現していたのだ。思わずこの演出にハッとさせられた。そ〜いうことなのかぁ…

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実際に行方不明になった訳でもなんでもなく、いても存在を認識されない・誰にも目を向けてもらえない存在になってしまったのだ。だから愛菜のエピソードでもきっと安曇春子は何気なく生活しているのだ、見えていないだけで。

春子が吸ってるタバコの煙が空に消えるのと同時に春子自身も消えてしまう場面も、意図的な演出として効いてるなと。

女を見ようともしない男達、それでもそんな男にすがりたい女の『イタくて痛い』物語だった。

この映画に出て来る男はみんなしょーもいんだけど、こんな男は街に溢れているんだろう。

 

考察:『少女ギャング団』の存在

『イタくて痛い』男と女の物語として終わってもいいと思うんだけど、2人のエピードを繋げるように、どちらのエピソードにも出て来る、男をボコボコにして回る『少女ギャング団』の存在が終始チラ付く。

これは男にいいように弄ばれた安曇春子や愛菜とバランスを取る為の『仕返し役』として見えなくもないが、実際はもう少し根が深そうだなと。

 

僕なりのな解釈としては、

『春子や愛菜』世代と『女子高生』世代とを分けるなら、昔は良いように女が男に弄ばれて来たかも知れないけど、次の世代はそうは行かないぞと。

男に振り回されない『新しい世代』の意思表示!

女子高生の制服は言わば戦闘服だ。ラストに女子高生が警察に銃を構え包囲されている状況を打破するくだりも『拳銃=男性器』ってメタファーはよく言われるけど、まさにそれで。

そんなちんけな男性器向けて(いやらしい目をして)私らを囲んでも無駄だ!こっからはお前等の好きにはさせない!と『警察=男ども』の包囲をなんなくすり抜けて行く。

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ここからさらに踏み込んでいけば、

最後いなくなってたと思われていた安曇春子と一緒にいた菊池亜希子演じる親友:今井の子供の名前は『ルージュ』。

漢字でどう書くのかは分からないが『ルージュ』って赤やピンクなど『口紅』を指す言葉。そして女子高生の制服に映える刺し色のピンク、それと安曇春子のグラフィティに用いられるピンク。。

などの共通点から推測するに、どこか現実味の無い『少女ギャング団』を率いていたリーダーの子は、未来から来た成長した『ルージュ』なんじゃないかな。

離婚したお母さん/お母さんの親友である春子おばちゃん/お母さんのキャバ嬢時代の後輩の愛菜ちゃん、男に苦しんだ3人に代わり、成長したルージュが未来からやって来て『少女ギャング団』を率い、世の男たちに制裁を食らわす!これから先、男が調子こかないような未来にするために。

あの安曇春子のピンクのグラフィティが『男たちへの宣戦布告のサイン』のように見え、それを軽薄は男達が広めている様も滑稽で皮肉めいて見える。

きっと警察の包囲をすり抜けた後『少女ギャング団』は、ユキオや春子の会社のセクハラ上司2人の元へ向かうのだろう。

さすがに『少女ギャング団』のリーダーが未来から来た成長したルージュって強引だろ!と思うかも知れないけど、今井と『少女ギャング団』のリーダー顔が奇しくも似ているのだ。この骨格!これは監督が意図した敢えてのキャスティングに思えるほど似ている。分け目は違うけど。そういう解釈も出来るように狙ってるんじゃないかな?

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ラストシーンで、安曇春子がルージュを抱っこしていたシーン=『新しい世代』担う代表としてルージュがその意志を引き継いだ、として見れなくもない!なんて妄想的な着地で自分自身を納得させました。

時代を戻るなら春子や愛菜が傷つく前に何とかしろって声も聞こえて来そうだけど、春子は春子でその後『自分なりの幸せ』を得たので、敢えて邪魔する事はしなかったのだろう。

『少女ギャング団』の存在は見るからにファンタジックであり、きっと何かしらのメタファーを背負わせいはず。人ぞれぞれ解釈し甲斐のある不思議は存在感でしたね。

 

賛否も分かる! 

僕みたいな解釈をすれば「じゃあ前の世代の女性はみんな、男に振り回された可哀想な人達ってこと?」とかツッコミも来そうだし、安曇春子が至った『男を見返す』方法が「それって結局負けを甘んじて受け入れてない?」とか「曽我やユキオが痛い目みてない!」って憤慨する人ももちろんいると思う。

予測不能だったストーリーのパズルが埋まって着地するラスト。それをポジティブと取るか、ネガティヴと取るかは人それぞれだけど、個人的にはポジティブな映画だと受け取りました。

 

まとめ

評価:★★★  普通に楽しめました。

こんなに感想が長くなったわりには★3です。春子と愛菜のエピソードは普通に面白かったんだけど、失意の底に落ちた2人のその後がもう少し見たかったかな。

それと強引に解釈してみせた『少女ギャング団』の扱い方も結構ぼや〜っとしているので、もう少し分かりやすい方が良かったかな。上の『考察』込みで予告を観るとまた違った印象を受けるのよね。

松居監督の過去作は観てないけど、本作から不明瞭なファンタジックな要素を抜いたモノが観てみたいなと思いました。あとどこか【ファイト・クラブ】ぽさも若干感じたかな。『フェミニズム版 ファイト・クラブ 序章』みたいな、そんな幕開けを少なからず感じました。

書き切れなかったけど、役者の演技はみんな良かった!蒼井優は安定してて、高畑充希のギャル演技は引くほど見事で、ユキオを演じた太賀も【淵に立つ】とは正反対のキャラで、地元にいる軽薄なチャラ男を自然体で体現してました。

[ 予告編 ]

 

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今回の感想で入れられなかったひと言:

曽我を演じた石崎ひゅーいはもっとはっきりしゃべれ!歯医者で麻酔打ったばかりか?!