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アバウト映画公園

"ほどほどの映画好き"アバウト男が最新作から旧作まで映画の感想をゆるめに書き綴る映画ブログ!たまに気になるドラマやおすすめ映画を紹介!基本大したことは書いてない。

葛城事件【ネタバレ映画感想/考察】キッツい鬱映画!巧みな脚本でぶっ壊れる家族を描いた力作!

映画『葛城事件』ネタバレ感想/評価&考察

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あらすじ:父親から受け継いだ小さな金物屋を懸命に切り盛りし、マイホームを手に入れ、妻の伸子(南果歩)と共に長男・保(新井浩文)と次男・稔(若葉竜也)を育て上げた葛城清(三浦友和)。理想の家族と生活を築いたと考えていた彼だったが、21歳になった稔が8人を殺傷する無差別殺人事件を起こして死刑囚になってしまう。自分の育て方に間違いがあったのかと清が自問自答する中、伸子は精神的に病んでしまい、保は勤めていた広告代理店を解雇される。やがて、稔と獄中結婚したという女・星野が現れ……。(シネマトゥデイ)

 

製作国:日本 上映時間:120分 製作年:2016年

監督・脚本:赤堀雅秋

キャスト:三浦友和 / 南果歩 / 新井浩文 / 若葉竜也 / 田中麗奈 等

 

  

どうも、アバウト男です!

去年劇場スルーしてしまい結果として、観なかったことを後悔していた【その夜の侍】の赤堀雅秋監督による三浦友和主演の【葛城事件】がレンタルされたので、このタイミングでようやく鑑賞。

 

キツいキツい鬱映画!

感想としては、当ブログ『2016年映画ベスト』の1位に選んだ映画【淵に立つ】にも通じる、『家族』が悲劇の一途を辿るキツいキツい映画でした。噂に違わぬ面白さ&納得の出来!観ている間は、

うわうわ、きっつ… の連続でした。

まだ事前に【淵に立つ】を観てたからキツさに対しての免疫が出来てたのもあるけど、本作を先に観ていたら【淵に立つ】の印象もあそこまで強烈なものになっていなかったかも。それくらいキツさに溢れていた。

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父・母・長男・次男からなる4人家族:葛城家の物語。作品の構成としては、次男の稔(みのる)が『通り魔殺人』を起こし、事件も落ち着いてきた来た『後』の様子と、稔が事件を起こす『前』の様子とを、三浦友和演じる父親の清を中心に交互に展開していく。

家に稔がうろついていれば『事件前』だし、清が脚を悪くし杖をつきサングラスをかけていれば『事件後』といった具合に、画的にしれっと時制の切り替えるを見せる。こういうスマートさがあると「なんか良い映画を観てるな」って実感する。

 

 

意外にも前半は『笑える』作り

『通り魔殺人』を起こしてしまう子供を抱えることになる家族の話なんだけど、意外にも前半部分は「この状況でそんなこと言うか?!」とツッコミを入れたくなる『空気を読まない場違いな言動』による笑いや可笑しみが随所に散りばめられていた。

そんな笑いの裏には、この葛城家の人々の『話の通じない感じ』を上手く表現していた。引いて自分のことや物事が見れない視野の狭さから、気付けば行くとこまで行ってしまった。

この前半の『笑えていたテイスト』が、後半の怒涛のキツい展開のギャップになってて、文字通り一切『笑えない』どん詰まりの極致へ、観ているこっち側まで引き込んで行く。

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同じ鬱映画の【淵に立つ】との比較で言えば、【淵に立つ】はそういう笑いの部分は一切排除しキツい現実や鬱路線をとことん突き進む作品で、こう見ると【葛城事件】の方が、エンタメ感があって映画として観やすい。

 

 

『通り魔殺人』がキッカケでは無い

葛城家がぶっ壊れ破滅して行った原因は、実は稔が起こす『通り魔殺人』のせいでは無かった。ここが結構意外で、観る前までは事件により家族が破滅していく話なかと思ってたら、そうじゃ無くて。むしろそこがこの話のポイントになっていた。

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物語が進むにつれ見えて来るんだけど、そもそもこの家族は事件前からすでにぶっ壊れていた。その『ぶっ壊れ』が清を除く3人それぞれに用意されていて、次男の稔の場合が『通り魔殺人』を起こし死刑をもって人生をドロップアウトするという末路を辿ったのだ。

新井浩史文演じる長男の保(たもつ)や南果歩演じる母親の伸子にも同様に『ぶっ壊れ』が用意されていて、結局、一家の主人としてどうにか家族の体裁を整えようとしていた清が1人取り残される形となった。

後半からキツさが加速していく展開に、思わず「え…」とか「うわぁ…」とか声が漏れていた。

 

 

ブーメラン的な言動や行動

本作、特徴的だったのは『ブーメラン的な言動や行動』が意識的に取り入れられていた事だ。

例えば、引きこもりの稔に向かって「働けよ…」と言う保はリストラで職を失い。自立しない稔を殺そうと清が包丁を手にするシーンは、後の『通り魔殺人』を連想させたり、伸子にガツンと言ってやろうとする保の嫁が、逆に確信的な事を伸子からから言われたり、死刑囚の稔と獄中結婚しようする田中麗奈演じる順子が、ラストで自分がしようしていた事の『あり得なさ』を痛感し我に返るくだり然り、『自分に返って来るブーメラン的現象』が印象深かかった。

そんなブーメラン的な演出がジャブのように効いて、観ている中で「もしやこうなるかも…」と『嫌を予感』を生み、それが絶えず物語の緊張感をキープしていた。

他にも、放火と稔が帰ってくるタイミング・やかんの音・保つの子の「バイバイ」など、前作の【その夜の侍】ではイマイチぴんと来なかったけど、「赤堀監督ってこんな上手かったけ?」と思わせる、計算の行き届いた無駄のない巧みな脚本と演出が際立っていた。

 

 

家族映画というより父親映画

この作品は一見『家族映画』に見えるけど、実のところは三浦友和演じる父親の清にスポットを当てた『父親映画』ですね。父権的というか、一家の大黒柱はなるだけ早い内に『城』となるマイホームを持ってなんぼの一昔前の父親像というか。

そんな理想の父親像を体現すべく人生を順調に歩んでる、もしくはこれから歩んで行くはずだったのに、気が付けば取り返しのつかないほどの有様に。

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『めでたい日には必ずお決まりの中華屋で食事をする』だとか『母親は仕事に出るな』だとか『長男の保には自分と同じような道は歩ませず、もっと良い職に就いて欲しい』などの描写に見られる、清の『こうあるべき』という頑固かつ半強制的な考えに、長い間3人が縛られ・押し付けられた結果、耐えきれずはち切れてしまったのだ。それが葛城家が『ぶっ壊れた』大きな原因に見えた。

ポスターに「俺が一体、何をした。」ってコピーがあるけど、これは本作を観れば分かるけど「俺が通り魔殺人を起こした訳でもないのに、何でこんな世間から冷たい目で見られなくちゃいけなんだ!?」という事を言ってるんじゃなく、自覚症状がない清という人間を一言で表したコピーで、観ている側としては、

お前がやってるんだよ!!!

と思わずにはいられなかった。

 

 

ラストシーンの意味とは  ※ネタばれ

伸子・保・稔の3人が『ぶっ壊れ』、1人家に取り残された清は、家を建てた際に記念で庭に植えた木で首を括ろと試みるがあえなく失敗に終わる。その後、清は暗いダイニングに戻りまた飯を食べ始める... というラストシーンで幕を閉じたんだけど、あのラストシーンは清の『苦しくても生きて行く』というケジメを示した終わり方に見えた。

これも順子に対して言った「稔を死刑にさせないでくれ、死刑はあいつの思うツボだ、稔は生きて苦しむべきだ」みたいな発言のブーメラン的な結末なのかなと。

要は「死んで楽になるな」と言った清本人が死ぬ訳にもいかず、今までの家族に対しての振る舞いやぶっ壊した罪を背負って、この先生きて行くということなのだろう。

食事のシーンで終わったのも『食べる=生きる』という明確な意味が込められてて、そこまで赤堀監督は意識してあのラストにしたんじゃないかな。清本人がどこまで自覚してるのかは分からないけど、首括って一度死ぬ寸前まで行った事で、ようやく全てを悟った…みたいな。

 

個人的には、清が部屋を荒らし始めたシーンで、これは『あの放火』の件がブーメランとなって、家族のいないマイホームを燃やす形で、清が焼身自殺をして終わるのか!?とも思ったけど、それは違いましたね。その後味悪目のラストでも話としては綺麗だったけどな!

 

 

適材適所なキャスティングと好演

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自分勝手で空気の読めない清を演じた主演の三浦友和を筆頭に、適材適所のキャスティングが見事にハマっていて、それぞれが抜群の好演を見せていた。

特に若葉竜也が演じた稔の圧倒的なクズっぷりは秀逸ですね!見るからに引きこもりニートの佇まいで、優秀な長男に対してできない弟を演じきっていた。『通り魔殺人』の前にした2つの所業の件もそうだし、葬式で笑ったり、罪を犯してもなんの反省の色も見せない卑近なクズ演技はマジ見事でした。

それと母親の伸子を演じた南果歩さんもハマってたな〜!旦那に強く言えなくて息子には甘い『天然系』の雰囲気や、壊れてからの「扇風機とめて」の発言のナチュラルな怖さだったり、伸子は南果歩さんじゃなきゃ成立しなかった、難しい役どころでしたね。

あと、保の妻を演じたのは内田慈!【きみはいい子】【恋人たち】に続いて、作品選びと良作に呼ばれる引きが強いな〜。密かに応援してます。

 

こういう作品を観てしまうと、自分が父親になる不安や怖さを改めて意識させられますね。まず結婚だろ!?と自分でツッコミは入れたくなるけど。

あと奇しくも自分も弟がいる4人家族で、尚且つ父親の見た目が軽く三浦友和に似てなくもなかったりで、重ねてしまう部分含め、観ていて苦さを感じる作品でした。

 

 

まとめ

評価:★★★★★  最高!フォーー!

最低で最高なタイプの鬱映画でした!去年リアルタイムで観ていたら、トップ10に入れるか入らないか、その辺りで迷うくらいの作品ですね。『通り魔殺人』を起こした加害者家族としての側面は意外と弱いので、それを楽しみに観るとちょっと違うかも。

[ 予告編 ]

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その夜の侍

堺雅人主演/共演に山田孝之。妻を殺された夫がクズ野郎に復讐しようとする話。

役者の演技も素晴らしいし、設定からして面白くなるかと思いきや、終わり方がわりと呆気なかった記憶が。でも山田孝之のクズっぷりは最高でした!振り返ると赤堀監督はクズ野郎の演出が上手いですね。新井浩文や綾野剛も出てるよ!

その夜の侍(新・死ぬまでにこれは観ろ! ) [Blu-ray]

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