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アバウト映画公園

"ほどほどの映画好き"アバウト男が最新作から旧作まで映画の感想をゆるめに書き綴る映画ブログ!たまに気になるドラマやおすすめ映画を紹介!

たかが世界の終わり【ネタバレ映画感想】みんな自分1人だけで精一杯なんだよ!バカ野郎!的映画

洋画 【タ行】 2017:劇場鑑賞 評価:★★ 洋画

映画『たかが世界の終わり』感想・評価・ネタバレあり

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あらすじ:劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)は、家族に自分の死が近いことを伝えるために12年ぶりに里帰りする。母マルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好物をテーブルに並べ、幼少期に会ったきりの兄の顔が浮かばない妹シュザンヌ(レア・セドゥ)もソワソワして待っていた。さらに兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)とその妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)も同席していて……。(シネマトゥデイ)

 

製作国:カナダ / フランス 上映時間:99分 製作年:2016年

監督・脚本・編集:グザヴィエ・ドラン

キャスト:ギャスパー・ウリエル / レア・セドゥ / マリオン・コティヤール / ヴァンサン・カッセル / ナタリー・バイ 等

上映館:「たかが世界の終わり」の映画館(上映館)を検索 - 映画.com

 

 

どうも、アバウト男です!

今回扱うのは若きカリスマ監督グザヴィエ・ドラン監督の最新作【たかが世界の終わり】。この作品はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したということで、今までドラン作品を観たことがない人も注目するような一本なんじゃないかな。

カンヌのパルムドールを目指すテレ東ドラマ【山田孝之のカンヌ映画祭】ウォッチャーとしても気になる作品なので観て来ました。今回は終盤ガッツリとネタバレしています。

 

ドラン監督の次への起点となる一作

今までドラン作品は【わたしはロランス】【トム・アット・ザ・ファーム】【Mommy/マミー】くらいしか観たこと無いけど、今回はそれらの作品とは一味違った作品でした。

結論から言うと、ぶっちゃけ

これは面白かった!マジ最高っす! カンヌ万歳!

とはならなかったんだよね… エンドロールが始まると同時に「お、おう… これで終わりかぁ」って若干の肩透かしと呆気なさを食らい、ひたすら「マジかぁ…参ったな」と呆然としながら席を立って劇場を後にしました。

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余命わずかな主人公ルイが12年ぶりに、母・兄・初対面の兄嫁・妹の4人家族の元に里帰りをして、その事実を告げようとする話。内容の大半は家族の熱の入った言い争いか、ウダウダとした無駄話だけ。大枠はひたすら会話劇。

過去の観たドラン作品なら、話にそれなりの起承転結があって、ちゃんと話が転がってたんだけど、今回は全体的に目立った出来事は起こらない。言っちゃえば平坦。

 

なんだけど僕が思うに本作は、ドランが前作の【Mommy/マミー】がカンヌのパルムドール候補となり結果審査員賞を取って、自分的にある程度のところまで行き着き、次の領域へと行くための布石として『成立するかしないかの際際を攻めた実験的な作品』を撮ったのではないだろうか。

その実験とは、会話劇であるにも関わらず、セリフ以外のモノで『物語って見せる/魅せる』という削ぎに削ぎ落とした1つの形式。

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表情が物語る・顔の向きや角度が物語る・目線の動きが物語る・声のトーンやしゃべりの速度が物語る・カットの切り替えやテンポが物語る・物の扱いや行動が物語る・沈黙や間が物語る・音楽や歌詞が物語る などなど。

「分かりやすい起承転結がある話じゃなくても奥行きのある物語は成立するし、言わんとしてることはちゃんと伝わる」といった、ある種の余裕・挑発・挑戦の入り混じった、ひたすら突っ走るグザヴィエ・ドランの意欲作に見て取れた。

これが見事『カンヌ国際映画祭』のグランプリへ受賞へと繋がり、確証を得た彼のネクストステージの起点になったんじゃないかな。

僕は素直に「面白い!」とはならなかったけど、逆にこういう作品がカンヌのグランプリを取ったとなると、日本映画との感性の差が浮き彫りになってしまったようで複雑な気持ちになる…  逆に本作の存在自体が、昨今の説明過多で冗長な日本映画へのカウンターパンチになっていて、「僕はここまで来てるよ」とドランの背中を見せられてるような気持ちにもなる。

なんちゅう作品を撮ってくれちゃってんだよ!

山田孝之!カンヌは今こんな感じだぞ!山田孝之や山下敦弘監督がこの作品を観たらどういう感想を持つんだろうか、すごく興味深い。

 

 

自分1人で精一杯な人の集まり

モヤモヤしてしまった自分を納得させるために考えた僕なりの本作の解釈としては、登場人物はみんな『自分1人で精一杯な人たち』で、そんな人たちが集った事で一波乱を巻き起こしそうになる物語として受け取った。死期を悟ったルイにしても、彼を帰郷を待ち受ける家族4人にしても基本は似ている。

 

ルイが12年ぶりに里帰りをしたのも、単に家族に別れを告げるためではなく『自分の命があと僅かだという事実』を1人ではとても抱えきれなくて、家族の元に帰って来たのだろう。

言葉として外に出して楽になりたい。この苦しみを共有して少しでも楽になるなら… そんな弱り切った心を押し殺すように彼は帰って来た。そこに言われる側の気持ちの配慮などは恐らく無い。

行きの飛行機で後ろの席に座っている子供がふざけてルイ両目を覆ったのは『現実を見たく無い=まだ死を受け入れられてない』という事を示しているのだろう。

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母のマルティーヌも息子の帰りを心から待ちわびてるというよりかは『長年出て行ってた息子の帰りをちゃんとオシャレして文句も言わず受け入れ、自慢の料理で持てなしてあげる』そんな素敵なママでいる自分に酔っている節がある。マニキュアくらい計算して早めに塗っとけババア!w とか思っちゃったけど。

妹のシュザンヌも幼い頃に別れた兄を『ちゃんとおめかしして一人前になった姿で向かい入れ、まず初めにぎゅっと抱きしめてあげるんだ!』、そんな12年ぶりに兄と再会する妹というに立場に母親同様に酔ってる。

ルイを自分の部屋に入れてから、仕事が終わったように「痒いから」と言ってメイクをすぐに落とし着替え、別にルイにグイグイで質問をするような興味もそこまでない。買い物の時に運転して行ってあげるとか自分の話をし出し、やはり気合を入れた再会の瞬間がピークなんだなと。

母のマルティーヌと妹のシュザンヌは同じ女性として血のつながりを感じさせる。再会のためにオシャレをしたり、喧嘩もするけど中盤のダンスのくだりを見ると時たま気も合ったりして。

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そして見るからに一番自分1人でいっぱいいっぱいになってる兄のアントワーヌ。弟は出て行き父親もいない家庭に尚且つ残された男は長男の自分1人、しっかりしなきゃいけない・家庭を支えるなきゃいけないプレッシャー、そして家を出て劇作家として成功し順風満帆で自由に暮らしている弟への反感もあって、なかなか拗れ具合。かなりナイーブで卑屈で気性の荒い男。「今更何しに帰って来た?!」とルイの帰りにおむずかり。

そんなアントワーヌの妻のカトリーヌは唯一、後から入って来た家族として3人よりも周りを見ることが出来ている。それもあってルイにも気をかけることが出来るんだけど、愛する夫のアントワーヌの動揺や拗れっぷりを見て、彼を守るためにルイにもそこまで肩入れ出来ないでいる。

元々自分たちに精一杯で破綻しかけているように見える家族の元に、これまた一杯一杯のルイが帰って来た事で、保っていた均衡がグラつき、結果些細な言い争いばかりで完全に空気殺伐としている。

 

 

ラストの解釈 ※ネタバレ

ルイがいよいよ『自身の死が近いことを』を告げようとたした時、兄のアントワーヌが色々とこじ付けてルイを帰らそうとしたのは、『もうこれ以上、波を立てるな!』という気持ちからの行動だろう。

アントワーヌはナイーブで人一倍自分で精一杯な分、そういう良からぬ『何か』にも人一倍敏感で、ルイが打ちあけようとしている内容が『自身の死』とは分からなくても、アントワーヌはきっと何か決定的なヤバい予感がしたはずだ。

「ただでさえ12年間ギリギリの均衡を保って成立していた家族の中に、お前の独りよがりな『何か』を投げ込んで来るなよ!」と。アントワーヌのあの行動は『家族を守るため』にルイを追い返したんだと思う。母や妹と違って見ているしかない妻のカトリーヌはそんな夫の行動に気づいていたはず。

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お前の『何か大事なこと=死(世界の終り)』なんか入り込む余地はここには無いんだよ!

これは、半ば他人と言い切った弟ルイの死の宣告よりも、結果的に家や家族を守る方を取った長男アントワーヌの不器用な愛の物語でもある。思ったのは【葛城事件】の三浦友和演じたあの父親にもどことなく似ている。

 

モヤモヤとしながらも観終わった後、振り返りながらこんな着地で自分を納得させました。そうすると日本版タイトルの【たかが世界の終わり】ってネーミングは秀逸だなと。あとルイ以外の家族の名前のラストが『ヌ』で終わるのも意識的なのかな。お前の居場所はここじゃ無いみたいな事なのかな?

キャストの演技はみんな素晴らしかった!キャリアの有無に限らずみんなが同じレベルで演じれてて、一人一人が不可欠な存在として活き活きと演じている。それを引き立てるカメラワークや編集・音楽の入れ方も諸々高水準。このレベル=ドラン監督の手腕って事なんだろうけど。

 

 

まとめ

評価:★★ うーん、イマイチ…

ここまで褒めっぽい感想を書いておいてアレだけど。個人的には観てる最中の面白さや、終わった直後「これ面白っ!」と実感できる【グリーンルーム】みたいな作品が好きなのもあって、確かに初見の印象としては退屈だったし、眠かったしのは事実。今までの観たドラン映画でも眠くなったけど、カンヌのハードルも上がってた分点数としてはこんな感じです。

よく『スルメ映画』って言葉があるけど、まさしく本作はそういう映画。初めは味しないけどひたすらしがんでいると味がして来る。

『観て→受け取って→振り返る』その一連の行為で面白さをじわーっと実感するような作品でした。多分これを踏まえてもう1度観たら、もっと楽しめる気がするけど、正直2度目はキツイな。 

[ 予告編 ]

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あとがき:【山田孝之孝之のカンヌの映画祭】を観ている立場からすると、第2話で矢田部さんや天願さんが言っていたカンヌに受ける作品の条件を本作は確かに満たしている。『監督の心から作りたいモノが明確に表れている』『整理されてない不親切な作品』、

そして『会話劇なのに会話を重要視しない映画』という事で、手法や形式としても新鮮。あとその国じゃないと分からないみたいな感じもなくボーダーレスで『フィジカル』も強い。あれ、今になって面白かったような気がして来たぞ!?

www.aboutman7.com

 

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今回の感想で入れられなかったひと言:

さすがに『マイアヒ』の曲の使われ方は日本では半笑いよね、ある意味目が冴えたけど。【コードネームUNCLE】で使われたヒロシのテーマを思い出した。