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早春【映画感想/ネタバレ/評価】傑作を観に劇場へ!痛感する恋心の暴走!

映画『早春 (1970)』ネタバレ感想/評価

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どうも、アバウト男です!

巨匠イエジー・スコリモフスキ監督が1970年に撮った青春映画【早春】。以前同監督が撮った【イレブン・ミニッツ】はあまり楽しめなかったし、過去作も全然観てないし、古い映画なので自分向けの作品じゃないなと勝手に決めつけてたんだけど、twitterで『童貞が観ればその後墓場まで持っていく作品!』みたいなツイートを見かけて、拗らせた人間としては一気に惹かれて観てきました。今回はデジタルリマスター版という事で46年ぶりに劇場でリバイバル上映されてるものです。ソフト化もされてないみたいですよ。今回は後半ネタバレありの感想があります。

 

青年の深い恋心が悲劇へと向かう

ざっくりなあらすじは、15歳の主人公マイクは職場の先輩である年上で奔放な女性スーザンに恋をするも実らず、その恋心が暴走し悲劇的な結末へと突き進んでいく。

本作を観た感想は、

素晴らしかった!!!

男なら誰しもが共感せずにいられない!奔放な歳上女性を好きになってしまった青年の強烈な想いと、暴走した恋心から図らずも取ってしまう奇天烈な行動の数々。そして切なくも美しい悲劇的なラストに思わず拍手を送りたくなる作品でした。

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(C)1971 Maran Films & Kettledrum Productions Inc. All Rights Reserved.

 

思春期の暴走する恋心

マイクが暴走して取る行動って決してサイコパスな感じではなく、思春期を経験した今だから「あちゃ〜、こいつキてんなっ!」と客観して思えるような、誰もが大なり小なり思い当たる節のあるヤバさや痛さに近くて、引くというよりは共感しもどかしい気持ちにさせられる。不器用とかそういう枠を超えちゃって完全なる盲目。目隠しして所構わず突っ走るような危なっかしさ。分からんでもない!

ポスタービジュアルを見てもらえれば分かりやすいんだけど、マイクが裸のスーザンのパネル(彼女かどうかは明言されてない)を水中で抱きしめてるからね!まさに本作を象徴する名シーンであり重要な場面でもある。出店のホットドッグを何個も何個も食べながら彼女が店から出てくるのを健気に待つシーンとかシュール!てかカオス!

 

色使いや画作りの良さ

この作品の特徴として、今ではあざといと感じてしまうほどメタファー然とした小物や色使いが散りばめられていた。

例えば、地面にぶちまけられる消火器の白い泡や牛乳・ふざけてスーザンに絡ませる白い糸なんかの『白』使いは『ザー◯ン』を連想させたり、

スーザンが仕事中にも関わらずクリーム(ここでも白)の乗ったチョコレートスムージーをパクついてるシーンがあるんだけど、そのスプーンをぺ◯スのようにやたらエロく舐めるあたり『スムージー』=『男』を表してるように見える。公衆浴場のスタッフの仕事をしながら、婚約者がいるにも関わらず男性客(マイクが通ってた学校の先生)とヤっちゃうスーザンの奔放さを小物で表現しつつ、仕事ばかりしてる堅物なオバさんと対面に座らせる構図とかもすごく上手くて。 またマイクの強い恋心と悲劇の要素を兼ね備えた『赤』が冒頭とラストに印象深く使われてたり、水中は彼の内面世界=願望を示している。

合わせて画作りも良くて、マイクが自転車を颯爽と漕ぐシーンや廊下のライトを揺らしながら走っていくシーンの恋してる感、水が抜かれただだっ広いプールに立つマイクとスーザン、2箇所出て来るマイクが水中を漂うシーンなど琴線に触れるシーンも多く、職場のシチュエーションを物語の展開にしっかりと活かし、ドキリとすらライティングによる演出も上手い。それにマイクの恋心とシンクロするようなロックな劇伴もGOODです!

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(C)1971 Maran Films & Kettledrum Productions Inc. All Rights Reserved.

 

※この先ネタバレします。 

 

SEXは終わりの始まり

マイクの奇天烈な奮闘により終盤見事スーザンとSEXする事になるんだけど、そんなムードもクソもない初体験は残念な結果に終わる。

ここでゾッとしたのが、マイクにとって今まで奮闘し続けた一種のご褒美や達成感としての『SEX』が、経験豊富なスーザンにとっては『1人の男として見れるかどうかの試験』として存在したことに、事が終わってからマイクと同時に観客も気付かされることになる。

これは残酷だろ…

15歳の童貞と年増の経験者の差なんて誰が見ても歴然だし、その一回きりで全てをジャッジされるようなティーンの男女の世界。SEXをした=好きとか・認められたとかそんな分かりやすいものでもなくて。という試験でも何でもなくてマイクを我に帰らせるための手段の1つ。これが残酷と取るかスーザンの優しさと取るか人によっても分かれそう。

そのどう抗っても埋めようのない差や自分の今の立ち位置に気付き絶望したマイクは、好きだからこその狂気に走ってしまう。

 

そもそもマイクはスーザンとのSEXなんか望んでいなかったのではないか? 振り返ってみると、そのSEXに行き着くまでマイクが自室でオナったり女性の裸に興味を示すような思春期特有の性欲描写が描かれていない。

ストリップの店前に置いてあったスーザンのパネルをパクったのも他の男に裸を見られたく無かったって純粋さが強かったに違いない。その後スーザン本人に「これはとういうこと?」と聞いちゃうあたり子供だと思うけど。これも分からんでもない!結果軽くあしらわれちゃって余計にマイクはモヤモヤすることに。

マイクは単にスーザンに振り向いてもらいたかった・自分を好きになって欲しかっただけだと思う。彼にとってキスや裸で抱き合ってプールに漂ってるだけで幸せだったのだ。スーザンとキスした時の彼の幸せど真ん中な表情を思い返すとマジで辛い。

実らない恋に爆発しそうなマイクは、無自覚で行き当たりばったりな行動の流れやからSEXすることになり、自ら地獄の道に足を踏み入ってしまったと思うと切なくなる。

チャンスや勝負の場面って準備も何もしてないタイミングで訪れる感じもすごい思春期っぽくもあり人生であり。『SEXした=残酷な大人の世界への始まり』みたいな事も暗示してるのかな。

じゃあ、あの随所で出てきたザー◯ンを連想させる『白』使いは何なのか?と観終わって振り返るとそれは『純粋で真っさらなマイクの想い』だったのだろう。その純粋なマイクの想いが行き過ぎて狂気に走った時『白から赤』へと変化したと考える方が自分的に納得ができた。

 

まとめ

馴染みがない公衆浴場のスタッフの仕事とか最初ピンと来なかったり、場面によっては間の取り方や画の見せ方とかコントっぽくて思わず吹きそうになったりもするけど、痛感する思春期のもどかしさや恋による盲目感など、想像以上にグッと来てしまった青春映画でした。

評価:★★★★★ 星5つ!満点!

女性は女性で男ってこういうところあるよね〜!とか過去に男か受けた奇天烈なアプローチを思い出しながら友達と語り合えると思います。

デジタルリマスター版だからから発色が良く、とても1970年に作られた映画には見えなかった。これは是非ともソフト化して欲しいな、劇場でやってる間に観に行くのがオススメです!

最近観た【勝手にふるえてろ】にも通じる恋する気持ち包み隠さず剥き出しに描いていて、「Fuck!」な気持ちを外にどう表現するかに長けた作品でもありました。スーザンがかますアグレッシブな両手ファックサインを観て欲しい。

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[ 予告編 ]

www.youtube.com