アバウト映画公園

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羊の木【映画ネタバレ感想】のろろアタック!元殺人犯の存在に揺さ振られるヒューマンサスペンス!

映画『羊の木』ネタバレ感想/評価

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どうも、本作に出てくるな市川実日子の髪型がド好みなアバウト男です!

『6人の元殺人犯が小さな港町に一気に訪れる』ってザックリなあらすじだけを聞いて、え、漫画『刃牙』の死刑囚編みたいな内容の映画!?、はたまた6人の元殺人犯によるバトルロワイアルに主人公然り町人が次々と巻き込まれるカオスなサスペンスホラー!?などと勝手な妄想を膨らませつつ気になっていた吉田大八監督最新作を観てきました。原作は漫画らしいですね。今回はネタバレしてます。

 

あらすじと予告

刑期を終えた元受刑者を自治体が受け入れる新仮釈放制度により、閑散とした港町・魚深市に男女6人が移住してくる。市役所職員の月末一(錦戸亮)は彼らの受け入れ担当を命じられるが、移住者たちの過去を住民たちに知られてはならないという決まりがあった。やがて、全員に殺人歴がある犯罪者を受け入れた町と人々の日常に、少しずつ狂いが生じていき……。

予告編:映画『羊の木』 予告編 - YouTube

 

まぁ冒頭で書いたような内容では無く、罪を犯した元殺人犯を過疎化の進む町に移住させ、安定した仕事と住居を提供することで再犯率や服役してる間のコスト下げようとする極秘の仮釈放プロジェクトの実施を引き受けた港町を舞台にした話。

 

率直な感想は、

普通に面白かったです!

【スリービルボード】の後に観たのもあって、似たようなメッセージも含まれる分、物足りなさは感じたけど、日本映画としては良作の部類に入ると一本だと思います。かなり地味だけどね。この派手さのない地味さがイイのかも。

小さな港町を舞台に『元殺人犯を受け入れる側』の元殺人犯と知った上でその人と上手く生活して行けるのか?その人をどこまで信じられるのか?という問いかけや、

『元殺人犯側』の前科者の生活の難しさや苦労、事件後のその人のあり方次第で報われる人は報われるし、そうじゃ無い人は… みたいな【スリービルボード】にも通じる『贖罪と救済』なんかも描いていて、エンタメ作でありつつ元殺人犯を受け入れる立場として「自分だったらどうだろう?」と観てる側の心理に訴えかけ、己が持つ偏見や考え方・心の強さなんかも浮き彫りにさせようとするヒューマン・サスペンスでした。

 

 

設定の面白さと手際の良さ

設定とキャラ配置が映画的で面白かったですね。架空の仮釈放プログラムを閉塞的で小さな町に取り入れる事で、人との関わりがわりと濃い町に異物を投入し、半ば強引に『元殺人犯』と関わらざるを得ない状況を作り『何かしら起こる』『何が起こってもおかしくない』不穏感漂うサスペンスな空気を作る。

気弱そうに見えて酒乱な福元/エロスの滲み出る太田(優香)/寡黙で地味な栗本(市川実日子)/元ヤクザのジイさん大野/見るからにチンピラの杉山(北村一輝)/【散歩する侵略者】然とした読めない男:宮腰(松田龍平)の6人。どいつも一癖ある元殺人犯。

適材適所な配役に物語がどう転ぶのか中盤になっても分からない。正直この手の松田龍平の使われ方には新鮮味ゼロだけど、この配役に取って代わる俳優がいないのも寂しい。

 

それっぽい人に付き添われての登場や、飯の食い方や食べさせるもので服役していたこと匂わせつつサクサクと6人を紹介する冒頭から、元殺人犯がどういう殺しで捕まったかのかを先入観を増幅させるような紹介で観客に揺さぶりをかけ、死人が出た事件で元殺人犯に疑いの目が行くように仕向けたりと、全体的に監督の手際の良さが伺える。安定感!

【パーマネントのばら】に通じる港町描写、宮沢りえをエロく見せた【紙の月】ばりに、熟れて来た優香のポテンシャルを見せつけるベロチューシーン、【桐島、部活やめるってよ】ばりに、よりによってそいつを好きになっちゃうのかよ!?的な主人公にとって切ない展開など、監督が得意とする要素を交えつつ、隙間で入るオフビートさやシンプルな劇伴の使い方も良い。個人的には前作【美しい星】よりも見やすくて好きかな。

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(C) 2018『羊の木』製作委員会 (C) 山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

 

元殺人犯の別れ道と悪人

物語を観て行くと、ぱっと見同じように怪しく見えた6人を一概に『元殺人犯』と一括りにするのは野暮だなと思えてくる。確かに人殺しといっても色んな人がいて、それぞれが抱えた事情や動機も違うし、事故として人を死なせた死ケースだってある。蓋を開けてみれば根っから『悪人』の方が少数派なのかもしれない。

ちゃんと自分が犯した罪を償い、真っ当に生きて行こうとしてる人には、それを肌で感じ受け入れてくれる周りの人や世間がいるって希望も作品内で提示してた。

そんな反面、6人の中にも根っからの悪人として北村一輝演じる杉本と、松田龍平演じる宮腰の2人が浮かび上がって来る。しかも両者は違うタイプの悪人なのも面白い!その2人の『混ぜるな危険』の接触が物語に火を付け、クライマックスへと持って行く。

見るからにチンピラの杉本はいわゆる王道なワル。不良の延長上で罪の意識が低く、生活における刺激やスリルを犯罪に求めるタイプ。

で、宮腰はサイコパス気質なヤバい奴。基本的には平穏を望むけど、その平穏が崩れたり自身を脅かす奴らの排除の為なら人殺しも厭わないし、相手の痛みとか一切考えないタイプ。

同じ匂いだと勘違いして絡んだ杉山が、より純度の高めなサイコパス宮腰に食われる展開は溜飲が下がると同時に『悪人』界における弱肉強食の世界が興味深くて面白かった。

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(C) 2018『羊の木』製作委員会 (C) 山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

 

崖から飛び降りたラスト

『2人でその崖から飛び降りると1人は助かり1人は沈んで死体さえ上がらない』と噂のある審判の崖なるものに、月末を巻き込む形で飛んだ宮腰なんだけど。あのラストの展開は唯一サイコパス宮腰の人間味が出た瞬間でグッと来た場面でした。

宮腰は己の殺人衝動とか性質・もしくは生きる価値の無い人間だと自覚した上で、新しい場所で平穏に暮らそうとしていて、それも結果的に上手く行かず警察にも追われ、彼は最後の賭けに出た。

宮腰にとって月末はいわゆる『世間的に良い人=真っ当な人=自分と対極にいる人』。その月末と崖から飛び降りて、もし自分が『生きる方』に選ばれれば神に許されたという事。生きる価値があり、この奇跡を機に今までとは違って真っ当に暮らせるんじゃないかと?と希望を持って。

もし『死ぬ方』に選ばれたら、それはそれで神が下した結論であり、彼にとっては生き辛い世界からの解放。考えてみれば宮腰にとってはどっち転んでも彼にとっては『救済』だったのではないか?『のろろ様』という神が見守る町、そしてあの状況で彼が崖から飛ぶという行為は必然的だったのかなと。

その神の審判を決定付けるためにも、それに見合う月末という犠牲が必要だったみたいな。でも結果として『贖罪もなしに救済なし』という事だったのだろうか、それとも単純に罪のない町人を殺した罰なのだろうか。神によるのろろアタック!によって彼は海の底に沈んでいった。。

やはり今考えると宮腰は松田龍平しかなし得ない役どころでした。月末を演じた錦戸くんの素朴な巻き込まれキャラも良かったですね。

 

まとめ 

「だったら初めから言うなよっ!」なシーンに象徴される元殺人犯という事実を周りの人に言う言わない問題とか、 杉山と一緒にトラックに轢かれたあの人の存在と無念さとか、観た人とあれこれ語りたくなる作品でした。ちょっと観てから一週間くらい経つので忘れて来てるけど。

評価:★★★★☆ 星4つ!

もう少し6人それぞれの描写や日々の積み重ねを丹念に描いて欲しかったですね。もっと上映時間が長くなっても良いから『サスペンスと見せかけてヒューマンドラマじゃん! …と見せかけてやっぱサスペンス!!!』くらいまで振り回してくれればより良かったな。

なんかクライマックスに向けて中盤から駆け足気味になってしまったので、そこが勿体なかったです。↓どことなく連想した作品を2作。

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