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映画が好きなんだけど観たそばからすぐに忘れていってしまうアバウト男の鑑賞備忘録ブログ

A【映画感想】オウム内部に迫ったドキュメンタリー!報道では見ることの出来ない彼らの姿!

映画『A』感想・評価

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こんにちは、アバウト男です。

今回はドキュメンタリーディレクターである森達也が『オウム真理教』の内部に迫ったドキュメンタリー映画【A】を観た感想になります。『オウム真理教』という題材と禁断の内部資料のようなシンプルなDVDのパッケージに前からちゅっと惹かれていて。近所でレンタルされてないのでメルカリで購入し観ることができました。

森達也監督はゴーストライター騒動の佐村河内守を追ったドキュメンタリー映画【FAKE】なんかも撮ってたりします。こっちの方が分かりやすくエンタメで観やすいかな。

 

概要と予告

森達也監督による、オウム真理教を扱ったドキュメンタリーである。被写体は主に当時オウム真理教の広報副部長であった荒木浩であり、タイトルAは荒木(Araki)のA、オウム(Aum)のAに由来するとされる。地下鉄サリン事件以降、オウム真理教に対する社会の態度をオウムの内部から映し出す。オウム信者の修行や生活の様子、荒木にマイクやカメラを向ける報道関係者の姿や、オウム信者を強引に逮捕する警察官などが撮影されている。(wikipedia)

予告編:オウム ドキュメンタリー 「A」予告編 - YouTube

 

 

オウムの内部と信者たち

まず冒頭からオウムの教団施設の内部の映像が淡々と写されるんだけど、その環境が生む異様な光景の数々が目を惹く。

まず部屋がとにかく汚い… 全体的に片付けられない人の部屋を雑居ビル全体に広げたような感じだ。廊下に放置された大量のダンボールやプラ衣装ケース、畳の上には脱ぎ捨てられた服、何かしらが入ってるゴミ袋、棚にはビデオテープの山、壁には言葉の書かれた紙や麻原彰晃の写真がどころどころに何枚も連貼りされている。ステレオには埃が被っていて麻原のお経のような呪文ような音声がひたすら流れ、天井の梁にはネズミがいる様子も映される。

食事は味噌っぽい土砂のようなペーストをハンバーグ上にしてフライパンで焼く。これがメインの食事で毎日食べてるらしい。違う場面ではタッパーに入った古いレンガのようなパンを食べていた。細いコードが何本もついたヘッドセットをしてオウムのビデオテープを観る信者。基本は裸足で座禅の形で座っていて、中には座禅を慣らすために車のシートベルトを巻く人もいる。

とにかく片付けるとか掃除する概念がないネズミが這うほどの汚い空間、延々と流れる麻原の呪文や歌、生きるに最低限な飯、こんな環境に身を置ける時点で人としての何かしらが欠落しているように見える。

この時点で信仰がどうだとか、煩悩を捨て去るとか崇高な言う前にとりあえず掃除しろよ!と言いたくなる。彼らの口から出る宗教的な言葉の数々に反して、身を置いてる劣悪な環境とのギャップが気味でした。

 

で、観ていてちょっとした違和感というか、彼等からしたら当たり前なんだけど、信者は麻原の事を『尊師』と呼ぶ。尊師かぁ…地下鉄サリン事件後、麻原が逮捕された状況でも変わらず麻原を崇めてるのが分かる。

印象的だったのがある信者が麻原の事を語る場面。過去にあった集会?か何かで、麻原が池の前に出ると池にいる魚や空を飛ぶ鳥たちが、あたかも嬉しそうに麻原の周りにぶぁ〜っと集まって来たんですよ!と、それを信者400人ほどが目撃してたんですよ!と麻原の凄さを活き活きと語る彼の目は死んでるように見えた。

てかどんな場所で集会やってんだよ?とも思ったけど。。

 

 

マスコミと警察

事件後、マスコミの矢面に立たされたのは広報副部長の荒木浩という人物だ。落ち着きのせいか28歳にしてはかなり老けて見える。

教団の取材をしに施設前に殺到するマスコミ。インタビューをさせて欲しいと荒木に交渉する場面で気になったのは、マスコミ関係者がヘラヘラしてる点だ。聞き分けのきかない子供を説得するも思うように上手く行かない時の「やれやれ」感を彷彿とさせるようなヘラヘラというか。「御託は良いから早く取材させろよ」と胸中伺える。

報道では決して見ることの出来ない報道陣の姿勢や、報道陣同士で他局に先を越されまいと言い争いする場面をこの作品では観ることができる。

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それと合わせて作品屈指の名シーンとなるのは信者に対する警察の対応だ。刑事が信者の行く手を阻み『公務執行妨害』を盾にちょこちょこと挑発した後、揉み合って信者を倒してしまう。次の瞬間「マズい!」と思ったのか倒した刑事が急に「痛たたた…」と脚を抑えだし怪我したアピール。完全なるコントのような後追い演技に思わず面食らう。

おいおい、マジか!?

で結局倒されて後頭部を打ったように見える信者は被害者では無く、公務執行妨害ということで現行犯逮捕されてしまう。このやり取りの一部始終を監督のカメラはガッツリと捉えていた。

これは怖い…というかショッキングなやり取りでした!

仲間の刑事が他の信者を引き離したり、怪我アピールする刑事を後押しする仲間の刑事とか、なんか明らかに手口がやり慣れてるのよね。あ〜こういうこと頻繁にやってんだろうなって。最終的に監督が撮っていたVTRが証拠となり不起訴処分で数日後に信者は解放されるんだけど。もし自分の父親があのでっち上げ刑事みたいな事をやってたら幻滅するレベルでやらかしてました。

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信仰の沼と矛盾

一通り観終わって思ったのは、彼らが取り組んでる『与えられる苦を受け止め、耐え、それを乗り越えることを良しとする』ような宗教の考え方って、なかなか厄介な考え方だし、厄介なシステムだなと。

冒頭に書いた汚い部屋の件もそうだし、事件後世間から忌み嫌われ排他される状況、崇めていた尊師からの裏切り、その全てを『苦』として考えると、その諸々を乗り越えてこそ良しとしていて、それ自体が修行であり、どれだけその苦難を乗り越える決意や姿勢なのかが=己の強さ・信仰の強さに繋がるので、結果抜け出せない無限ループ状態。魔のスパイラル。

 

で、オウムに出家した信者は家族や友人と決別をして、施設に引きこもり解脱に向けて食欲や性欲などあらゆる欲を立つ修行をしたりするんだけど、教団トップの麻原は6人の子を持ち、教団内に愛人が100人以上いると言われるくらいにSEXしまくりな性欲の猛者だったってことを考えると、もうめちゃくちゃですよね。笑

普通の人より欲エグいな!

↓下記の『性的嗜好』欄を読むとなかなかキてますよ。

ダーキニー (オウム真理教) - Wikipedia

 

信者は結局何をリスペクトして何を崇めてるのかと疑問が湧くんだけど、作品内ではサリン事件後もはや麻原がどういう人物なのかは信者にはとってはあまり関係ないようも映る。

監督が信者の1人に「もしグル(尊師)が警察に泣いて土下座して、自分だけは助けてくれと詫びてもグルの事を崇める?」みたいな事を質問すると、その信者はそれでも気持ちは揺るがない言う。それは「自分を解脱まで導いてくれるのはグルだけだと確信しているから」と断言して見せる。これはスゲェなと。もうズブズブに踏み込み過ぎてる。ここまで行くと引き返すとか教団を抜けるなんて考えは頭の片隅にもないんだろうなと思う。

 

 

行き場のない残された人

結局、教団施設の解体や立退きなんかが諸々あって、場所を転々とする残された信者たち。ラスト荒木は田舎の祖母に会いに行ったところで作品が終わる。

ある意味この作品に映る信者たちは加害者である事を押し付けられた被害者でもあるように見えた。この中の誰もが出家する際に、まさか教団が組織ぐるみで殺人を犯すなんて思っても見なかっただろうし。なら事件後すぐ抜け出せばイイじゃん!?と思うかも知れないけど、もうその時にはオウムに判断基準や価値観をガラッと変えられていていたんだろうなと。誰にとってもオウム真理教という存在は災難だったのかもしれない。

 

 

まとめ

トータルすると森監督は『オウム=悪』とか『オウムは実はそんなに悪くないよ』みたいな片棒を担ぐような事はせず、わりとフラットに彼らや彼らを取り巻く環境を映し出し、作品を構成してるように見えました。当時のおぼろげな記憶や報道とは、また違った別角度からオウムを知れた一作でした。うん、観る価値アリです!

評価:★★★★☆ 星4つ!

実際にはニュアンスや細かい描写とかアバウトな部分もある感想なので、ぜひ自分の目で直接この作品を観て欲しいと思います。続編の【A2】も観たので近いうちその感想も書きます。 オウムを連想させる教団を扱った是枝裕和監督作【DISTANCE/ディスタンス】と合わせて観ても面白いと思います。Blu-ray出たんだ!?

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