アバウト映画公園

映画が好きなんだけど観たそばからすぐに忘れていってしまうアバウト男の鑑賞備忘録ブログ

憎しみ【映画感想】移民青年の怒りが憎しみに変わる時!COOLな映像が随所で光る一作!

映画『憎しみ』ネタバレなし感想/評価

f:id:tyler-7:20180507160515j:plain

 

どうも、アバウト男です。

若き坊主頭のヴァンサン・カッセルが主演を務めたフランスの青春映画【LA HAINE】こと【憎しみ】を観ました!

1995年なので決して古い作品って訳じゃないんだけど敢えての全編モノクロ構成。俳優でもある監督マチュー・カソヴィッツはこの作品でカンヌ国際映画祭で監督賞&フランス版アカデミー賞と目されるセザール賞で最優秀作品賞を受賞。

カンヌの監督賞でいうとこの翌年が【ファーゴ】のジョエル・コーエンってこと考えるとにんか凄いっすね。ずっと前から観たかったんだけど、ようやく観れまたのでラストのネタバレなしでサクッと感想を。

 

概要と予告編

パリ郊外の移民スラムに住む三人の青年の、運命の一日を生々しくスリリングに描き、フランス現代社会の抱える矛盾を暴き出す衝撃的なドラマ。監督・脚本は【天使が隣で眠る夜】に出演したマチュー・カソヴィッツ。1995年カンヌ映画祭監督賞受賞。 

 

怒りが憎しみに変わる時

警察との暴動が起こる最中、誰もが怒りや憎しみを内包し、その衝動をどうぶつけて良いのか、どこへ向ければ良いのか分からず、夢も希望もない移民青年たちの姿や、荒れたバンリューの街の空気感、彼らの地に足のつかない日常描写を、意欲的なカメラワークや画面構成で生々しく映し出した良作でした!

f:id:tyler-7:20180508181818j:plain

ユダヤ系のヴィンス(ヴァンサン・カッセル)は、友達のアブドュルが暴動の最中、警官に暴行を受け病院送りになった事を聞き怒りを募らせていた。

そんなタイミングで警官が落とした一丁の拳銃を拾ったヴィンスはアラブ系のサイード、黒人ボクサーのユベールと街をふらつきながら「もしもアブドュルが死んだらこの銃で警官たちを殺す」と息巻いていた。そんな彼らの運命の一日を描いた物語だ。

何かあれば突っかかって来る警官を心底嫌って爆発寸前のヴィンスが、拳銃を手に入れた事で『いつその怒りを行使するのか』と物語に常に緊張が漂わせつつも、基本はこの作品の1年後に公開された【トレインスポッティング】みたいなウダウダとした日常描写が多く、団地を中心とした彼らの生活を垣間見ることが出来る。

暴動で破壊されたボクシングジム、友達の家に行き映りの悪いテレビで報道を見ては、その窓の向こうには仲間によって燃やされた丸焦げの車が2台。アブドュルの容態を見に病院に出向いては厳戒体制で警官に追い返され、パリに遠出すれば痛い目に遭ってしまう。

時折時間が表示される中、朝から翌日の明け方までの丸1日を彼らとダチになり一緒にふらふらとアテもなく徘徊しているような感覚にもなれる。

 

【トレスポ】と違うのは彼らが酒やドラッグに溺れてる描写が無いこと。この作品はハッピーさがほとんど見当たらない。怒り溜め込み、常に仲間と罵り合ってなんとか理性を保っているように見える。一箇所サイードがマリファナ?を吸うシーンはあるが、そこにはトリップして現実逃避するってよりも、諦めに近い虚無感を感じてるように見える。

f:id:tyler-7:20180508181650j:plain

その中でもDJが外に向かって音楽をかけプレイするシーンが印象的だった。わざわざどデカいスピーカーを外に向け、街にいる仲間に「何腐ってんだよ!?」と尻を叩いてるようにも見える。

そこからドローンで撮ったような団地を低空で映して行く一連のシーンがとてもCOOLで。どうやって撮ってるんだろ?それこそドローンじゃないけどラジコンヘリにカメラ取り付けて撮ってるのかな。

 

 

バンリューの若者

本作の舞台となったのは『バンリュー』というパリの郊外にある移民の多く住む公営住宅地帯

wikiの情報によると第二次世界大戦後、旧植民地から大量に受け入れた移民を低所得世帯用の公営住宅団地に住まわせていたが、石油ショックを経て80年代以降は失業率が増加したため、移民の2、3世は非行に走り、結果的にバンリューはフランス社会から危険地区としてみなされた。

なるほどね〜

この情報を知ることで、彼らのドン詰まりな状況や苛立ち、スラムとまではいかないけどどこか閑散とした街の様子がスッと入ってくる。

他にバンリューを舞台にした映画で有名なのは最高なパルクールアクション映画【アルティメット】原題:Banlieue 13だ。確かにあの映画も街が荒れてたな〜と思い出した。【アルティメット】もかなり好きです。

 

f:id:tyler-7:20180508204047j:plain

 

 

目を見張るCOOLな画の連続

さっきの団地の空撮の件もそうだけど、この【憎しみ】はスタイリッシュといいよりもCOOLなカットやカメラワークが多く見られるので、映像を学んでいる学生さんにオススメしたい教科書のような一作でもある。

これ見よがしに「これカッコイイっしょ!?」と監督のドヤ顔が浮かぶような見せ方はせず「あれ今のシーン何か良かったな!?」と巻き戻してもう一度観たくなるようなさり気ない良さが好感が持てる。色に頼らないモノクロだからこそ、カメラの動きだったり画角やアングル、画の良さがより際立つ。

f:id:tyler-7:20180508200450j:plain

まずは冒頭のカマしのシーンでシッカリ心掴まれてしまう。地球らしき円に向かって火炎瓶が落ちて行く様子が映し出され、その火炎瓶が地面に直撃するとぶぁ〜〜!!!と画面全体をモノクロの炎が覆い尽くす。これだけで「あ、この映画普通じゃない…」と観る気スイッチが入る。予告編でもこの部分は見れるのでぜひチェックして欲しい。

直線的な寄り引きを多用するカメラワーク、台詞なしにクローズアップで真意を表現したり、カットを割らず長回しで見せたり、鏡があるシチュエーションで絶妙にカメラが映らない撮影の仕方、バンリューの土地を活かした画作りなどなど。静止画としても切り取れる画の良さが随所で光る。個人的には話の展開よりも映像の良さに惹かれました!それくらい刺さった。

f:id:tyler-7:20180508202921j:plain

冒頭で語られる50階の窓から飛び降りた男の話。その男は地面に落ちきるまで「まだ大丈夫、まだ大丈夫、」と思いながら堕ちていったそうな。その言葉がヴィンスを筆頭とするバンリューにいる当時の青年たちの状況そのものなのだろう。

いつかこの怒りや憎しみが爆発する時まで「 まだ大丈夫、まだ大丈夫、」と思いながら1日また1日と日々を生きてたのだろう。思わぬ展開から瞬間的に『憎しみ』が溢れ出すラスト… ぜひ自分の目で確かめみてください。シビれます!

 

 

まとめ

銃を手にした事で状況が一変する物語やDJプレイシーンなんかを見ると1992年公開の映画【JUICE】の影響なんかも受けてたりするのかな?実際観てみたらカルト的な人気があるのも分かる。やっぱりヴァンサン・カッセル、カッケーっす!

評価:★★★★★ 星5つ!満点!

ここ最近のマチュー・カソヴィッツ監督作はパッとしないけど、この作品だけは本物だと思います。amazonで売られてる【憎しみ】のBlu-ray&DVDの金額とか高値が付いてちょっとビックリしますよ!?もしお近くのレンタル屋で見かけた際は手に取ってみてください。

 

憎しみ 【ブルーレイ&DVDセット】 [Blu-ray]

憎しみ 【ブルーレイ&DVDセット】 [Blu-ray]

 
アルティメット [Blu-ray]

アルティメット [Blu-ray]