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映画が好きなんだけど観たそばからすぐに忘れていってしまうアバウト男の鑑賞備忘録ブログ

寝ても覚めても【映画ネタバレ感想】好きって感情に翻弄される!それが人間だしそこが面白い!

映画『寝ても覚めても』ネタバレ感想・評価

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どうも、アバウト男です。

お久しぶりです。映画は相変わらず観てるんだけど、観た感想をブログに書きたいという欲求が全然湧かず更新が滞ってました。ただ今回は書いておきたいなと思った作品に出会ったのでその感想を書きます。

その映画のタイトルは【寝ても覚めても】

概要は柴崎友香の同名小説を濱口竜介監督が映画化した大人のラブストーリー。実は第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品で、完全にパルムドールを獲った【万引き家族】の影に隠れていたダークホース的作品がここで登場!みたいな立ち位置の作品なのかな。このタイミングで監督の濱口竜介って名前も始めて知ったし、本作のキャスティングがまた面白い。

当ブログでは【クローズ EXPLODE】【デスノート Light up the NEW world】などで結構けなし気味な東出昌大が一人二役を演じ、瀧本美織から交代してソニー損保のイメージキャラクター(今は松本幸四郎と内田有紀)となったは良いものの、いまいちパッとしなかった唐田えりかが映画初出演&初主演というちょっとトリッキーな配役。他にも有名どころでいうと瀬戸康史や【勝手にふるえてろ】での好演も記憶に新しい黒猫チェルシーのボーカルでもある渡辺大知など。

乃木坂46のまとめサイトは毎日見てるくせに、全然見てなかったtwitterを久しぶりに開いたら、この映画が凄く良かったという感想をチラホラと見かけ、思い立って観に行ったという次第です。

 

あらすじ

麦(東出昌大)と朝子(唐田えりか)は恋に落ちるが、麦は彼女の前から突然居なくなってしまう。それから2年がたち、彼女は麦との思い出が残る大阪を離れて東京で暮らし始める。ある日、麦と外見はそっくりだが性格の違う亮平(東出昌大)と出会う。麦のことを忘れられないがゆえに彼を避けていたが、一方の亮平はそんな彼女に強く惹かれる。亮平と接するうちに彼に惹かれていく朝子だったが……。

 

アバウト男的 満足度

満足度:★★★★★ 満点!

『泣く』とかいう感情の揺さぶられ方とは違って、なんか真意を目の前で見せられ、自分の中にある数多くの価値観の柱の一本が抜き取られたかのような喪失感と、鳥肌までは立たないまでも確かにゾクッとする身震いを味わい、感情を乱された後にすーっと肩の荷が軽くなるようなラスト。久しぶりに『ヤラれた』作品でした。(なんともザックリ、抽象的…)

ちなみに、これから観に行く人予告編は観ないで行った方が良いと思います。展開的な驚きが違ってきます。僕もあらすじだけ読んで予告は観ないで行きました。ネタバレ感想となってますが終盤にそれとなく書いてあるので、それより前は多分大丈夫です。

 

こんな人にオススメです

  • 恋愛映画を毛嫌いしてる人、又は苦手な人
  • 読めない展開に振り回されたい人
  • 「好き」ってなんだろう?とか、恋愛にモヤモヤしてる人
  • 結婚を考えてるパートナーがいる人
  • 東出くんの演技にあまり期待してない人
  • 唐田えりかという新たな女優の誕生を目撃したい人
  • 【アベンジャーズ・インフィニティウォー】のラストのお通夜みたいな空気感をもう一度味わいたい人 etc.

 

 

感想

雑誌GQのtwitterアカウントでこんな文が載ってて、

要は「概要や宣伝などのポスタービジュアルから普通のラブストーリーだと思うかもしれないけど、この映画は普通のじゃありませんよ」という事だと思うんだけど、自分としては本作こそ『普通のラブストーリー』に感じました。普通というよりも『普遍的』って言葉の方が合ってるかな。

「私もこんな恋愛したいな〜、キラキラ〜、キュンキュン!」と現実を逃避をするような恋愛映画を俗に言う『普通のラブストーリー』だとするなら、本作は確かに普通じゃない。そんな逃避なんかする余地のない『ある種の現実』を突きつけるような、普遍的な恋愛の側面を真摯に描いた作品だった。

 

出来た人間ばかりじゃない

唐田ちゃん演じる、物静さの中に強さ(身勝手さ)を秘める朝子が、東出くんが一人二役演じる幻想を体現したような男:麦(バク)と現実を体現したような男:亮平、同じ容姿を持つ2人の男の間を揺らぐ8年間を描いた話なんだけど、恐らく賛否両論当たり前・万人受けする作品ではないだろうし、この映画にノレない人がいるのも分かる。

ノレない原因は、同種意外の人間は受け付けないタイプだったり、非現実的な恋愛映画や漫画の見過ぎだったり、映画鑑賞において感情移入を重要視する人だったり、朝子のように自分の気持ち(本能)のままに動く事を選ばず、妥協したり安全牌な相手と落ち着いたため無意識に朝子に嫉妬してる人だったり… 色々と理由はあるんだろうけど、そんな人からしたら朝子という存在はノレない『あっちの側の人』なんだろう。ラストの着地含め単に朝子だけにノレないって事じゃないんだろうけど。

 

自分は極端にどちら側でもないけど『あっちの側の人』の気持ちも分かる。と言うよりも『あっちの側の人』は世間にいっぱい溢れてるし、自分だってそうならないとも限らない。

駅の改札前でずっとデコくっ付けてるイケてないカップルが多いのもそうだけど、好きだから周りが見えなくなったり、好きだから追っかけたり干渉・束縛したり、好きだから友情より恋愛を取ったり、好きだから駆け落ちして肉親と縁を切ったり、好きだからズブズブ不倫にハマったり、好きだから誰かを裏切ったり、好きだから殺したり… 世間話やニュースで散々聞かされるじゃん。

『好き』って気持ちだけで人は努力したり苦難を乗り越えることも出来れば、時に『好き』という気持ちに取り憑かれて自分でも思っても見なかった行動をとってしまう事もあるし、そこには人を傷つけてしまう暴力性や狂気性だって含んでたり。

今何気なく暮らしてる現実が『出来た人間』ばかりじゃないように、本作は普段は覆っておきたいような真意をちょっと突飛な話を用いて取り繕わずに寓話的に見せてくれた。そういう監督の姿勢然り作品に好感を持った。

【スリービルボード】でも感じだけど、改めて人間は厄介で面倒で複雑な生き物だなと、それ故に面白いんだけど。そういう側面を描いて見せてくれる作品ともなかなか出会えない分、出会った時に思わずハッとさせられてしまう。

 

絶妙な配役

「いやいや、そんな馬鹿な…」的なぶっ飛んだ話でも成立させ、最後まで見せ切ってしまうのは、主演二人の絶妙なキャスティングによるものだろう。

今まで演技に地に足ついてなかったように見えた東出くんが一皮向けた演技を見せ、何を考えてるかわかない表情の未知数な唐田ちゃんが、どう動くかわからない動物的な朝子を演じ、特別先入観なく「朝子ってこういう人なのか」と納得させてしまう。

それでいて周りのキャスト陣に比べてこの主演の2人だけがちょっと浮いてるように見えるため、結果この男女か織りなす突飛な話とのバランスが映画的に上手く取れてるようにみえた。

 

 

ラストシーン

あとラストシーンも痺れました。着地の仕方。実に山あり谷あり、そしてあっち行ってこっち行って『その諸々の答え=ラストの画』みたいな。言葉で直接的な説明をせず画でじっくり伝えるラストシーン。「気付かせてくれてありがとう」と言いたくなる。ちょっと違うけどデヴィッド・フィンチャーのある作品なんかも思い出しましたね。

個人的にはこのラストシーンを観て肩の荷がすーっと軽くなったんだよね。恋愛とか結婚って正解はないし特別綺麗なものでもない。男と女なんて別の生物であるから分かり合えなくて当たり前、嫌いなとこや分からない部分もあって当然。

数年経ってもまだこの気持ちのままでいられか正直分からないけど、今この時は互いに同じ方を向いて『好き』って気持ちに少なからず希望を持ってスタートしてみようって。分からないからこそ信じるしかないって。そんなメッセージを受け取りました。

 

あれやこれや

終盤、朝子がある決定的な行動に出た時の観客全体の張り詰めた空気感ったらなかったね。「え…  …マジか ……」みたいな。【アベンジャーズ・インフィニティウォー】のラストでも同じような空気感を感じたけど。邦画でまたあの空気感を味わえた事だけでも嬉しいです。

すごく情報量が多いので全ては飲み込めてないけど、写真展の写真、カメラワークや何気ない会話、シリアスな展開とクスッと笑える場面の対比、日常の風景や場所の切り取り方、朝子のアイライン、なんとも言えない劇伴とtofubeatsの主題歌など、もう一度あの世界観に浸りたいなと余韻に引っ張られること間違い無しです。

この作品を観て『恋愛したくなる』かは分からないけど、恋愛にモヤモヤしてる人ほど刺さるしと思うし、なんかパーソナルな『気付き』を得れるんじゃないかな。

 

余談 (ちょっとネタバレ)

ちょっと前に見たメンタリストDaiGoが自身で配信してる動画で言ってたんだけど『異性の理想のタイプ』って所詮『理想』でしかなくて、実際理想のタイプの人と付き合ってる人は世界に一握りしかいないとの事。現実はその人が身を置いてる環境・周りにいる異性の中での善し悪しで付き合う異性を決めてる事が多いから、結局のところ厳密に理想のタイプに沿ってなくても付き合ったり結婚したりしてて。DAIGO曰く相手の『理想のタイプ』から外れてるからと言って、すぐに諦めない方が良いと。

それでいうと、これに当てはまるのかは分からないけどw、朝子の行動にも妙に納得できたんだよね。麦のいなくなった世界で亮平に惹かれるのも、麦が現れた世界で衝動的に動いたのも。

人の行動原理や価値基準なんて自身や周りが思ってるよりきっとグラグラで、理性が本能に勝てない時だってある。でも本当に大切なものは問いかければちゃんと自分自身の中にあって。なんかそんなもんなんじゃないですかね。

この映画の答えを歌にしてる主題歌tofubeats『RIVER』のMVを貼っておきます。唐田ちゃん出演してます。これを聴いて黄昏ます。