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映画が好きなんだけど観たそばからすぐに忘れていってしまうアバウト男の鑑賞備忘録ブログ

累【映画ネタバレ感想】その座は私のモノ!醜くて逞しくもある欲望映画!

映画【累-かさね-】映画感想/評価

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どうもアバウト男です!元々観るつもりは無かったんだけど、twitterでの反応がかなり良かった作品、土屋太鳳&芳根京子 W主演の【累-かさね-】を気になって観てきました。原作漫画は未読です。

 

あらすじと予告

伝説の女優の娘・淵累は卓越した演技力を持ちながら、自分の醜い外見にコンプレックスを抱いて生きてきた。彼女の母親は、キスした相手と顔を取り替えることが可能な謎めいた口紅を娘にのこす。一方、舞台女優の丹沢ニナは、容姿に恵まれながら芽が出ずにいた。やがて二人は出会い反発し合いながらも、互いの短所を補うために口紅の力を使うことにする。 

 

 

W主演2人の演技が光る欲望映画

率直な感想は、

納得の面白さでした!

あんまり映画を観ない人に「最近何か面白い映画ないかな〜?」って聞かれたら、本作をオススメするんじゃないかなってくらいに、突飛な設定・内容ながらも無理のないバランスでまとめられていて、物語的にもダレる事なく、特に女優『土屋太鳳』の演技を十分に堪能できる一本だと思います。

人間誰しもが持ったことあるであろう『あの人みたいになりたいな〜』とか『あの人のあの強みが自分にもあったら良いのに〜』という、ある種の健全な『憧れ』や『無い物ねだり』的な欲求を、実際に叶えることができる魔法のような道具があるとするなら人はどうなるのか?

現実ではあり得ない『魔法の道具/口紅』によってその欲求を叶え、叶えたが故に次第に肥大化する人間の底知れぬ欲望や、自分の為なら他人の人生まで奪う強欲さなんかを、えぐり出すように描いた快作でした。

…なんて他人事のように言ったけども、自分にももちろんありますよ!そういう欲求。「身長が170後半くらい欲しかったな」とか「明石家さんまみたいにノンストップで喋れるトーク力が欲しかった」とか「久保田利伸みたいな歌声だったらカラオケでモテるだろうし、歌手にもなれてたかもな」とか色々と。そういう分かりやすい欲求を物語のキッカケにしてるので、興味深く観れちゃいました。

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誰もが目を奪われる美貌を持つが演技力がイマイチで女優として伸び悩むニナ(土屋太鳳)と、天性の演技の才があるにも関わらず顔に大きな傷を持ちずっと日陰の存在だった累(芳根京子)が、不思議な力を持つ口紅をつけキスすることによって互いの顔を入れ替え、ニナには抜群の演技力を持たせ、累には演技する場を与え欲求を満たし合う関係になった。

当初はwin-winの関係だったはずなのにそこは人間の性、得たものを手放したくなるのは当然の流れ。そんなウィンウィンな関係が次第に崩れ出す。。

というよりもwin-winな関係ように見えて、実のところ『外側/美貌』を持つニナと『中身/演技力』を持つ累の2人で『真ニナ』というべきか?美貌も演技力も兼ね備える1人の最強の女優を作り上げていたことに過ぎず、その椅子に座れるのはどちらか1人。そこに想いを寄せる男もダブっちゃったりして、そりゃもう面倒臭いことに!

よりハングリーで、より覚悟があって、より努力を惜しまない人間こそがその座を勝ち取る。弱肉強食であり、この争いって表舞台に立てる席の数が予め決まってる役者(舞台)の業界にも重なるなと。ある意味『夢』を叶えるってのにも同じことが言える。

 

累ね/重ねというキーワード

今回タイトルの累から連想する『重ね』というキーワードが指すように、作品内にいくつも配された『重ね』が印象的でした。

まずは唇を重ねる事で顔が入れ替わる不思議な現象から、顔を入れ替えその人になりきり人生までも自分のモノにしていくような行為と、稽古を重ね他人を自分のモノにしていく舞台の『演技』との関係も重ねることができるし。

他で言うと、後半メインとなる舞台『サロメ』の内容と累自身、累と累の母親の透世、ニナと累を演じた土屋太鳳と芳根京子の知名度の差のある女優としての立ち位置や、同世代の女優としての意地や演技の闘いなんかも役と重なる。

メタな構造も含んだ幾重にも積み重ねた『重ね』によって、普段なら見えてこない底の底からすくい上げたような、人間の欲望や醜さを観客にも分かりやすい形で見せてくれました。逆に欲望を満たそうともがく姿が逞しくも見えてくる。

観ててタフだなーって。毎回キスで顔を入れ替えて、12時間のタイムリミットを意識しながら行動すんのとかダルいよ。。

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ホラー要素

顔を入れ替えることによって、他人に自分が乗っ取られたかのような状況になる怖さったらね!普通にホラー映画的なノリも感じました。

まだ本人同士のいざこざレベルで、12時間経てば必ずで元に戻るってルールがあるなら、まだなんとかなりそうだけど、中盤の自分の親まで巻き込まれるくだりはもう堪らん。。あの展開はゾッとした。あの時点で一線を大きく超えたなって。

親が自分によそよそしく、自分の顔したやつが親と仲良くしてる様を他人として見る辛さ。自分は確かに自分なのに、外側が違うだけで自分じゃない。自分は何者?アイデンティティがぶっ壊れて病みそうになる。

ちょっと種類は違うけど『ボディスナッチャー系/宇宙人侵略モノ』ホラーに通じる怖さを感じました。

 

 

ちょっとした不満/気になった部分

もろもろ楽しめたんだけど、気になった部分もいくつかありました。細かいけど。

1. 口紅の減り

原作読んでないから何とも言えないけど、あの口紅って減らずに無限に使えるものなの?母親の代から使ってて、累も半年くらい使ってるけど一向に減ってるように見えなくて。口紅いつまで使えんだよ?ストックとか数本あるのかな。

 

2. 終盤に出てくるフェイクの口紅

よく「フェイクを用意してました〜」って場面を映画とかで見かけるけど、それってスパイとか【オーシャンズ11】みたいなその道のプロが用意するなら分かるんだけど、一般人が小汚いアンティークな口紅のフェイクをそう簡単に用意できるか?みたな。漫画なら展開的に違和感無いんだろうけど、実写で見せられるとそういう部分で若干の冷めたり。。

 

3. ラストの累の演技

本作、ニナと累という正反対の人間を見事に演じ分けた土屋太鳳然り、芳根京子の芝居はすごく良かった!…んだけど、作品内で映画【ブラックスワン】のような『渾身の演技』をサロメのラストで見せるって流れは分かるよ。ただこの一番の見せ場であるラストの累の演技の凄さ・凄まじさがいまいち伝わって来なかったのがちょっと残念でした。

言い方として伝わりにくいかもしれないけど『ラストの累の渾身の演技』を『本作でのタイプの異なる二役を演じ切った土屋太鳳の演技力』の方でかなり補ってる、と言うよりも誤魔化してるような気がして。

つまり本作での土屋太鳳の演技はトータル的に確かに良かったんだけど、それとラストの累の演技力とは別の話で『=』では無いなって。もっと分かりやすく言うと、今回の土屋太鳳は凄い!けど土屋太鳳演じる累のラストの演技が「なんか凄かった…」とは見えて来なかったモヤモヤ感。

それ以前に、累の演技力の高さを示すために、わざと周りの役者をヘタめに演じさせてる時点で演技を扱う作品として、これどうなんだ…?とも思ったりもして。

極端な例だけど『客を魅力する歌の上手さ』を映画で表現するのに、周りの歌手をオンチにするのと同じ感覚というか、それって歌上手いって事になるか?みたいな。まぁ歌の上手さより演技の上手さの方が見た目的に分かりにくい分、観客に分かりやすい見せ方を選んだっても理解できるけど。

意識してるであろう【ブラックスワン】から8年?今同じような題材を扱うのであれば、そういう部分を超えて『映画をスクリーン越しに観てる観客が、スクリーンの中で行われる舞台の演技に思わず鳥肌が立つ』レベルまで行って欲しかったな〜と。

出た、ここにも人間の欲望が!

土屋太鳳のラスト見開いた片目。貞子みたいな怖い顔してもそれだけじゃちょっとスッキリしないよね。 

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4. 偽物が本物が超える件

これもキーワードの1つとして出てた『偽物が本物を超える』という件ですが、これも見せ方的にあまりシックリ来なかった。

恐らく『ニナと顔を入れ替えた累が、本来のニナよりもその顔を使いこなし、持ち前の演技力で本物のニナを通り越し、ニナそのものになった』という意味と、もしかしたら『サロメという演目の内容を累が現実の世界でやってのけた』って部分も当てはまるんだろけど。

それよりも『偽物が本物を超える』ってのを表現するなら、例えば。サロメのラストカットでニナの顔のまま累の大きな傷がガッツリ浮かび上がり舞台が終わる、傷のことは御構い無しにその表現力・芝居に圧倒された観客は彼女にスタンディングオベーション、拍手を送り続ける… 的なオチ。

偽って隠してきた自分が内から食い破って外に滲み出て来て、最終的に顔の傷を演技力が凌駕した…みたいたラストだったら個人的にはもっとグッと来たかな。これはイチ観客の戯言ですが。

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評価:★★★★☆ 星4つ!

細い不満点が無いわけではないけど、あまり過去の出演作を観て来なかったのもあって、そこまで期待してなかった土屋太鳳の表現力とその振り幅には目を見張るものがあったし、それが堪能できただけで満足でした!

まだ1作しか舞台は出演してないみたいだけど、これから舞台にもバシバシ呼ばれそう。浅野忠信も良い仕事してました。